(前回から続く)

①AR

 今回のCEATECで目立ったキーワードの一つが,「AR(augmented reality,拡張現実感)」である。ARは人間が見たり聞いたり,触ったりして得た現実の情報に,コンピュータで加工処理した情報を重ねる技術である。ARを応用したさまざまなアプリケーションが展示された。

ヤマハのピアノと連係動作する「エアピアノ」。セカイカメラのタグとしてピアノの演奏情報がカメ ラ映像の上に表示される。そのタグをクリックすると演奏が始まる。新しい音楽の表現手法として注目を集めた。

 ヤマハは頓智・(とんちどっと)のARアプリケーション「セカイカメラ」と連携して,ピアノの演奏情報をiPhoneのカメラ映像に表示させるデモを披露した。同社の自動演奏ピアノ「ディスクラビア」で演奏した際の情報(MIDIと絶対時刻)をインターネット上のサーバーに保存し,オン・デマンドに呼び出して再生できる「Piano Lifelog」と呼ぶ技術を使った。iPhoneのカメラをピアノにかざすと,そのピアノの演奏情報がタグとして表示される。

 組み込み機器向けのソフトウエア開発を手掛けるエイチアイは,特定のモノに携帯電話機のカメラをかざすことで,それに関連する音声や音楽を再生するARアプリケーションを参考出展した。建物にカメラをかざすとその建物の説明が流れる音声案内などの用途に向くとする。

エイチアイは,カメラに映った物体を認識して音声で説明する「音の拡張現実」を出展。

 AR技術を応用した家電のインタフェース「CRISTAL(control of remotely interfaced systems using touch-based actions in living spaces)」を出展したのが,五十嵐デザインインタフェースプロジェクトである。部屋にある家電製品の映像をアイコンとして操作することで,実際の家電製品の操作につなげるシステムである。例えば,テーブル上の照明スタンドの映像を指ではじくように触ると,消えていた部屋の照明が点灯するといった具合だ。

 携帯電話事業者もARアプリケーションの開発を積極的に進めている。KDDIが前回に引き続き「実空間透視ケータイ」を出展したほか,NTTドコモは,カメラが映す現実の情報に方向ガイドを重ね合わせる「直感ナビ」を出展した。また,友人の携帯端末が取得した位置情報と方位情報を使って,自分の携帯端末に表示した地図に友人の居場所を示す「友達レーダー」も見せた。

ヤマハのピアノと連係動作する「エアピアノ」。セカイカメラのタグとしてピアノの演奏情報がカメラ映像の上に表示される。そのタグをクリックすると演奏が始まる。新しい音楽の表現手法として注目を集めた。

五十嵐デザインインタフェースプロジェクトの「CRISTAL」は,テーブルに埋め込んだディスプ レイに表示される家電製品の映像を触って操作する。天井に設置したWebカメラの映像をディスプレイに表示している。

エイチアイは,カメラに映った物体を認識して音声で説明する「音の拡張現実」を出展。

五十嵐デザインインタフェースプロジェクトの「CRISTAL」は,テーブルに埋め込んだディスプレイに表示される家電製品の映像を触って操作する。天井に設置したWebカメラの映像をディスプレイに表示している。

NTTドコモは「直感ナビ」を出展。カメラ映像の上に周辺の情報を表示する。

②電子書籍