(前回から続く)

 携帯電話機は“機能詰め込み”の時代を終え,個人のライフスタイルに合わせてより使いやすく,より便利に活用する方法を提案する段階に入っている。それには,携帯電話機同士だけでなく,家電などとの連携を含む快適なネットワークが不可欠になる。今回のCEATECではその一つとして,より高速化・大容量化した無線データ通信技術が実用化に近づいていることを感じさせた(図1)。

図1 実用化近づく高速な無線データ通信技術<br>KDDIは,高速赤外線通信「Giga\-IR」と近接無線規格「TransferJet」に関するデモを披露した。(a)は,Giga\-IRを利用してホーム・サーバーで録画したテレビ番組データを携帯電話機へ転送するデモ。(b)は,TransferJet対応の携帯電話機で街角のポスターにタッチすると動画データが伝送されるというもの。(c)は,東光が開発したTransferJet用の小型カプラ(アンテナ)。小型の携帯機器に向ける。
図1 実用化近づく高速な無線データ通信技術
KDDIは,高速赤外線通信「Giga-IR」と近接無線規格「TransferJet」に関するデモを披露した。(a)は,Giga-IRを利用してホーム・サーバーで録画したテレビ番組データを携帯電話機へ転送するデモ。(b)は,TransferJet対応の携帯電話機で街角のポスターにタッチすると動画データが伝送されるというもの。(c)は,東光が開発したTransferJet用の小型カプラ(アンテナ)。小型の携帯機器に向ける。
[画像のクリックで拡大表示]

 例えば,最大1Gビット/秒のデータ伝送速度を実現できる高速赤外線通信「Giga-IR」に関する展示が見られた。KDDIは動作デモを,ロームは薄型の送受信モジュールを出展した。

 KDDIが披露したのは,ホーム・サーバーで録画したテレビ番組の動画データを,Giga-IRを利用して携帯電話機へ転送することを想定したもの(図1(a))。54Mバイトほどの映像データを,携帯電話機を模した小型機器に転送して見せた。

 Giga-IRではデータを送受信する際に,送受信する機器同士を5cm以内に近づける必要があるという。これに対して,現在携帯電話機で利用されている赤外線通信の距離は20cmほどであり,現行仕様と比べて通信距離は短い。その理由は受信感度が不足しているためだが,もう一つは,実際に20cmも離してデータ通信を行うユーザーが少ないためだ。要望があれば,5cm以上の通信距離を確保する考えもあるという。

 Giga-IRが携帯電話機などで実用化される時期は未定だ。ただし,「対応する受信チップの製品化は早くても1年から1年半ほど。実用化されるのは現在から1年半から2年後ではないか」(KDDIの説明員)とみる。

ポスターから映像をダウンロード

 KDDIはまた,近接無線規格である「TransferJet」に対応する携帯電話機と,街角に張ってあるポスターに携帯電話機を付けるとTransferJetを用いて短時間に動画が伝送されるデモも見せた(図1(b))。