では,どの程度共用できるのだろうか。まず,基地局と携帯電話事業者の中央設備を結ぶコア・ネットワーク用のインタフェース仕様は完全に同一だ。また,端末と基地局を結ぶMAC層やRLC(radio link control)†層などのレイヤー2以上のプロトコルも,わずかな相違があるにすぎない。
†RLC=無線リンクの制御を行うプロトコル。
大きな違いが出るのは,物理層である。フレーム構造や変調方式などに違いはないが,TDDとFDDの差異に起因する部分で異なっている(表1)。具体的には,制御信号や同期信号に関する部分とRFフロントエンド回路の部分に相違点がある。前者はソフトウエアで変更できるため,共通化する場合に問題はない。後者のRFフロントエンド回路はFDD LTEでは受信信号が送信信号と混信しないようにデュプレクサ(送受分波器)†が必要であるのに対し,TD-LTEでは上りと下りのタイミングでフィルタを切り替えるスイッチ回路が必要になる。ここについても,FDD LTEとTD-LTEのRFフロントエンドの実装を共通化することは比較的容易である(図5)。
†デュプレクサ=送信信号と受信信号を分離する回路。アンテナを上りと下りで共用した場合,上りの信号が下り信号処理用の回路に流れ込んで受信を妨げるが,これを防ぐ。
こうしたことから,大手基地局メーカーは同一の装置でTD-LTEとFDD LTEを選択して利用できるような実装をしている。また,米Qualcomm Inc.やフランスST-Ericsson SAなど多くの携帯電話機用半導体メーカーが,共通のベースバンド処理LSIでTD-LTEとFDD LTEを共用できる製品を提供している(表2)。