モジュラーデザインは、ベースモデルを基にした流用設計とは別物だ。部品の種類を減らすには、顧客要求にさかのぼった標準化・モジュール化が不可欠となる。モジュラーデザインに取り組む前に、行っておくべき準備活動を紹介する。(日経ものづくり)

 モジュラーデザインに取り組む前に、準備活動としてやっておかねばならないことがある。この準備活動は、(1)製品モデルを確立すること、(2)モジュール数およびその使い方を確立すること、(3)モジュラーデザイン活動の目標を設定して実行計画を立てること、の3つだ。以下、各項目の詳細な内容を説明していく。

(1)製品モデルの確立
 製品モデルとは、ある製品(例えば自動車全般、冷蔵庫全般といったレベルのくくり)について、顧客/製品企画/システム設計/部品設計/生産設計の視点から、用途/方式/構造などの相違を「最小公倍数的」に包含した「構成」(の灰色の部分)に示し、さらにそれぞれの構成間の関係(のマトリックス部分)を構造化した、製品の総合的な写像のことである。単純にいうと、ある製品に関するすべての仕様項目と仕様値、それらの関係が標準として含まれている「模擬製品」である。完成された製品モデルは、客先製品仕様を入力すると、生産部品構成(生産図面や生産部品表)が出力される、製品設計用シミュレーション・ツールになる。

図●製品モデル
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 構成同士の関係は、複数対複数なので、製品モデルの構造はマトリックスで展開する形となり、最終的には設計手順書で明らかにする。

 製品モデルは、What(何をつくるのか)を規定した「製品仕様構成」と、How(どのようにしてつくるのか)を規定した「製品技術構成」の2つに大別される。製品仕様構成は、客先からの機能要求と付帯条件を示した「客先製品仕様構成」と、それを社内での技術的な仕様表現に変換した「社内製品仕様構成」から成る。製品技術構成は、製品の機能を網羅した「製品機能構成」、機能を実現するための“仕掛け(方式、方法)”を網羅した「製品システム構成」、製品システムを物理的に実現する「設計部品構成」、および設計部品を生産する単位にくくり直した「生産部品構成」から成る。それぞれの構成には、モジュール化された仕様項目と仕様値を登録する。

 個別の製品は、前述のように「最小公倍数的」に標準化された製品モデルから該当する構成、仕様項目、仕様値を引き抜いて設計する。これを「標準設計」という。