COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

第5回:大ニュースが社内を揺るがす

田野倉 保雄=日経エレクトロニクス
2010/05/11 00:00
出典:日経エレクトロニクス、1999年1月4日号 、pp.115-117 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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前回より続く
三洋電機がLiイオン2次電池の負極材料で使っているグラファイト系炭素材料である。この材料はもともと銀白色(写真左上)だが,Liイオンを吸蔵すると,表面がしだいに黄金色に輝くようになる(写真中央)。コークス系炭素材料の場合,グラファイト系炭素材料ほどLiイオンを吸蔵できないため,黄金色にはならない(写真右下)。(写真:三洋電機)

「Al合金の溶接はできないのでは。事例がない」。そう考えていた雨堤徹氏は,偶然見たテレビ番組でAl合金が溶接できることを知る。それを心の支えとして試行錯誤を繰り返し,最適な溶接条件を見い出した。そしてついにAl合金製の角型Li2次電池の試作品を完成させる。そのころのこと。社内を揺るがす大ニュースが飛び込んできた。

 「一体どんな電池なんだ。皆すぐに調べるように」。ソニー・エナジー・テックが「Liイオン2次電池」という新しい電池を開発したというニュースで,雨堤氏の部署は蜂の巣を突ついたような騒ぎになった。

 入手したニュース・リリースによれば,「Liイオン2次電池」は Li2次電池の欠点だった充放電サイクル寿命を飛躍的に高めたものだという。雨堤氏が開発に取り組んでいるLi2次電池は充放電サイクル寿命が100回程度。それが,Liイオン2次電池の場合,1000回以上になる。しかも小さくて,軽いようだ。

 どうやら電極材料にLi2次電池で使うLi金属やLi-Al合金を使わずに,炭素材料を使ったのがミソらしい。この炭素材料を負極,そしてLiCoO2を正極に使うことで,充放電のたびにLiイオンが両極間を移動する仕組みだ。このとき,炭素材料がLiイオンを取り込んだり,放出したりするのである。

眠っていた特許

図1 雨堤氏の上司,生川訓氏
図1 雨堤氏の上司,生川訓氏
雨堤氏が入社した当時からの直属の上司である。1982年,グラファイト系炭素材料に関する特許を取得した。現 ソフトエナジー事業本部 ソフトエナジー技術開発研究所 電池開発部部長。(写真:柳生貴也=本社映像部)

 ただし,いまのところそれほど性能は高くない注1)。むしろNi水素2次電池のほうが上回っている。「不気味な存在ではあるな」。雨堤氏はそう感じながら,実験室に向かうべく席を立とうとした。

注1) 平均作動電圧は+3.6V,体積エネルギ密度は253Wh/l,重量エネルギ密度は115Wh/kg,充放電サイクル寿命は1200回以上だった。

 そのとき,雨堤氏の上司である生川訓氏が,机の上に積まれている資料をゴソゴソさぐりながらつぶやいた(図1)。「この電池の負極で使っている炭素材料,俺がかなり前に実験した材料に似ている気がするな。特許を取ったと思うけど…」。生川氏は資料の山から数枚にまとめられた紙を取り出し,雨堤氏に手渡した。「これ,ちょっと見て」。特許公報だった(図2)。

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