将来の展望が見えにくい中、新興国の手強い競争相手から追われる立場となった日本企業には、閉塞(へいそく)感が漂う。このような状況を打破するには、いち早く「新しい時代のものづくり」に対応しなければならない。「新しい時代のものづくり」とは何か、そしてそれを実現するモジュラーデザインとは何かについて、モジュラーデザインの第一人者である日野三十四氏に解説してもらう。(日経ものづくり)

 近年、モジュラーデザインの重要性が認識されつつあるが、モジュラーデザインは単に部品種類を削減したり、コストを低減したりするための手法ではない。日本企業は再び「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれるために、新しい時代に適応したものづくりを確立しなければならない。モジュラーデザインは、そのために不可欠な考え方であり、手法である。

 新しい時代のものづくりは、次の5つの条件を満たさなければならない。

図1●マス・カスタマイゼーションの概念
実践 モジュラーデザイン』を基に作成。

(1)「マス・カスタマイゼーション」を実現する
 マス・カスタマイゼーションとは、「製品を構成する部品はできるだけ少数化・モジュラー化して部品レベルでマスプロダクションによる低コストを実現すると共に、少数化したモジュラー部品の組み合わせを巧みに変えて個別の顧客向けに製品をカスタマイズする」という概念であり、1990年代初めに米国のジョセフ・パインが提唱した(図1)。部品を少数化することは、部品を造るための機械設備や金型、治具などの用具も少数化できるので、省資源、環境保全にも効果的である。

図2●ECMとSCMを連動させたバリューチェーン
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