前回から続く)

 実際,こうした状況の変化をビジネス・チャンスととらえるエレクトロニクス・メーカーが,ここにきて相次ぎ始めている。

 例えば日立製作所は,家庭での健康管理などに利用できる測定機器として,脈拍などを測定する腕時計型のセンサを2006年初めに発売した。東芝コンシューママーケティングは,家庭で測定した体脂肪や血圧,心電図の測定データを基に,医師からのアドバイスを送信するサービスを始めている(pp.100―108の第2部「戦いの場は家庭へ,測定や分析に知恵を絞る」参照)。

 市場がより家庭へと近づくことを受け,既存の家電事業との連携を図りながら健康分野の事業に参入する事例も出てきた。例えば米Apple Computer,Inc.と米NIKE,Inc.は,運動靴に装着したセンサで測定した健康情報を,「iPod nano」に転送して管理できるようにする製品群を米国では2006年7月,日本では同年9月に発売する。松下電工は,睡眠の状態に合わせて照明やAV機器,エアコンを制御する「快眠システム」を提案している。

図4 医療・健康分野へ本腰を入れる<br>NEC液晶テクノロジーは,医療分野向けの液晶パネルに特化したカタログを2006年7月に初めて用意した。
図4 医療・健康分野へ本腰を入れる
NEC液晶テクノロジーは,医療分野向けの液晶パネルに特化したカタログを2006年7月に初めて用意した。
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 それだけではない。2006年7月に開催された医療・健康関連の展示会「国際モダンホスピタルショウ2006」では,例えばナナオが,同社が開発する画像転送/遠隔制御装置を応用することで,遠隔地(外出先)にいる専門医に対して急患の診断画像を転送するシステムを展示した(pp.109―114の第3 部「進む『いつでもどこでも』化,表示装置や電子部品に脚光」参照)。NEC液晶テクノロジーは電子カルテの普及などによる液晶パネルの需要増を見込んで,同展示会に初めて展示ブースを設けた(図4)。こうした事例は枚挙にいとまがない。