(前回から続く)
千葉 徹(ちば・とおる)氏
千葉 徹(ちば・とおる)氏
シャープ
執行役員 研究開発本部副本部長 兼 システム技術統轄

1977年4月,シャープ入社。以降,情報システム事業本部 移動体通信事業推進センター 所長,通信システム事業本部 通信システム開発研究所 所長,技術本部 システム開発センター 所長,デジタル家電開発本部 本部長などを歴任。一貫して研究畑を歩む。2005年6月,取締役 技術本部 本部長に就任。2008年6月から現職。

――先日発表したネットブック「NetWalker」は,電子書籍端末としても使えるということで,電子書籍市場からも注目を集めています。

 電子書籍端末として求められる性能は,ケース・バイ・ケースです。例えば,テキストが主のコンテンツなのか,地図のようなコンテンツなのか。あるいは絵本などの場合は,シチュエーションとして子供が親と一緒に読むわけですから,複数人で見られるような端末でなければならないでしょう。どんな場所で読むかによっても変わってきます。

 我々は,携帯電話機から液晶テレビ,電子辞書まで,いろいろな種類の端末を手掛けていますが,端末によって得手不得手があります。もちろん一つひとつの端末は,できるだけ多くの領域を網羅しようとはしますが,やはり本の場合はジャンルが幅広いですから,すべてカバーするのは難しい。さまざまな端末を持っていることが,電子書籍市場におけるシャープの強みといえるでしょう。

――御社は近い将来,電子書籍の専用端末を投入することも示唆しています。

 使い勝手の良さが,専用端末の魅力だと思います。ただし,投入時期は,まだ決めていません。もちろん2年も3年も待っていられないという思いはあります。

 専用端末は,その地域の出版文化に合わせていく必要がありますから,世界同時発売ができるような製品ではありません。まずは,国内を中心とした地域を想定しています。米国などと異なり国内では電子書籍がまだ大きな動きになっていませんが,他の企業が先行した後に,追い掛けていくのはシャープのイメージにそぐいません。電子書籍市場には長年かかわってきたという自負もありますし,ある程度,市場で先行していきたいと思っています。

――電子ペーパーの関係者は,「なぜシャープは液晶で電子ペーパーに勝負を挑んでこないのか」と語っています。

 まさに,これからそこを狙っていきたいと思っています。これまでの歴史から言うと,液晶は携帯電話機やテレビといった用途で十分すぎるほどの需要がありました。それで,手いっぱいだったのです。しかし今,次の新たな用途を探していかなければならない状況です。その一つとして,電子書籍にはかなり注目しています。液晶にはもともと,テレビに応用する前に,“電子紙”を作ろうという狙いがありました。実用化の順番は逆になりましたが,液晶の次の目標は,まさにそこにあるのだと思います。

――御社は電子書籍コンテンツ用のフォーマット「XMDF」を手掛けています。一方,世界では「EPUB」というフォーマットが主流になりつつあります。

 フォーマットは国ごとに存在してもいいと思っています。書籍には,それぞれの国の文化があります。それを一つのフォーマットでカバーしようというのは無理があるでしょう。日本語に向けて開発してきたXMDFは,中国などの漢字文化圏とも相性が良いと思っています。技術的には,XMDFのアジア展開の可能性は十分にあり得ます。

――今後,電子書籍市場で勝負していく上で重要なことは何でしょうか。

 端末だけでもダメ,コンテンツだけでもダメ,うまく同期を取っていく必要があるでしょう。国内でも,市場の立ち上がりは近いとみて,いろいろな人たちが動き始めています。こうした動きの同期が取れるかどうか。競争だけではダメで,協調が必要です。それが,キーワードだと思います。

―― 終わり ――