(前回から続く)
佐藤 陽一(さとう・よういち)氏
佐藤 陽一(さとう・よういち)氏
グーグル
ストラテジック パートナー
デベロップメント マネージャー

東洋経済新報社で英語版刊行物および財務データベースのマーケティング・販売などに携わる。1998~2006年には,マイクロソフトでマイクロソフトプレス(マイクロソフト公式解説書)事業の日本担当マネージャを務めた後,グーグルに入社。「Googleブックス」に関する出版社・図書館とのパートナーシップ構築などを担当,現在に至る。

書籍検索サービス「Google Book Search(Googleブックス)」を展開するGoogle社が,電子書籍市場で注目度を増している。2009年末には電子書籍販売サービスを始めるほか,Googleブックスでは作家団体や出版業界と合意した和解案について,これに反対する連合「Open Book Alliance」が2009年8月に発足するなど話題に事欠かない。Googleブックスや電子書籍販売サービスについて同社に聞いた。

 Googleブックスのゴールは,書籍コンテンツをインターネット上で流通させることでは決してない。限りなく多くの書籍を“検索”できるようにすることだ。ニュースやブログを検索するためにGoogleのWebサイトを訪れるのと同じように,書籍を検索するためにGoogleのサイトに来てもらえるようにしたい。そのため,より多くの書籍を検索できるようにして,ユーザーにとって役に立つものにしていく。そうなれば結果として,Google社の広告ビジネスモデルに貢献することになる。Googleブックス自体に“大きな収益を上げる”という狙いはない。

 書籍を検索した結果,それを紙の本として手に入れるのか,電子コンテンツとして手に入れるのか,それはユーザーが決めること。Googleブックスで検索すると,いわば“立ち読み”として書籍全文の20%まで見られる。その上で,紙の本で買いたいユーザーには,オンライン書店サイトへのリンクを用意している。

 紙の本ではなく,電子コンテンツとして読みたいというユーザーに対しては,英語圏で2009年末に,Googleブックスのサイト上で100%内容を読める有料サービスを始める計画だ。出版社と契約して書籍検索を提供するプログラム(パートナープログラム)に沿って実施する。現在,検索して20%まで見られるようになっている書籍数は180万。このうち出版社が全文での販売を希望する書籍が,有料サービスのスキームに載ることになる。ユーザーが購入したコンテンツは,あくまでGoogleブックスのサイト(ブラウザー上)だけで見られる。今後,別の端末に移動して読めるようにしてほしいという要望が出てくれば考えたい。

 販売する書籍コンテンツの価格を決めるのは出版社で,売り上げの大半は出版社側に入るようにする。出版社にとって利益になるようにして,より多くの書籍を出してもらえるようにしていきたい。

 検索によって書籍にたどり着くという特性から考えると,我々のサービスで有効なのは新刊書より,むしろ“ロングテール”の書籍。表立ってプロモーションしていなかったり,書店に置いていなかったりする書籍に販促効果が高く出る。世間でいわれるように,Amazon.com社を競合として認識してはいない。

―― 次回へ続く ――