前回から続く)
図11●太陽電池を宇宙に設置する
図11●太陽電池を宇宙に設置する
太陽電池で発電した電力をマイクロ波で送信する宇宙太陽光利用システム(SSPS:Space Solar Power Systems)。宇宙航空研究開発機構(JAXA)のデータ。

 太陽から地球に届くエネルギーは,人類が消費するエネルギーよりもはるかに多く,活用できればエネルギー問題の解決に直結する。しかし,地上で太陽光を捕捉しようとすると,昼夜や天候の影響を受けて不安定なエネルギー源となってしまう。

 このため,基幹エネルギーとしての活用が進んでこなかった。これに対して,昼夜や天候の影響を受けない宇宙に太陽電池を設置しようというのが,SSPSと呼ぶ宇宙太陽光利用システムである(図11)。

 SSPSのアイデアは,1968年に米国の研究者によって提唱された。米NASA(National Aeronautics and Space Administration)などで検討が進められたが,現在では「日本における技術開発が世界で最も進んでいる」(JAXAの佐々木氏)状況にあるという。

 JAXAは,地上から3万6000km離れた静止衛星軌道上に,原子力発電所1基分に相当する1GWの太陽電池プラントを設置し,発電した電力をマイクロ波に変換して地上の受電設備に送信する計画を進めている。壮大な宇宙空間に,このプラントを大量に導入すれば,十分なエネルギーを確保できるため,エネルギー問題の解決が一気に進む可能性がある。