前回から続く)

 NYK スーパーエコシップ2030のCO2削減量のうち,太陽電池の貢献はわずか2%と少ない。しかし「どれか一つが欠ければ目標を達成できない。2%でも非常に重要な要素」(日本郵船グループで技術開発を担当するMTI 技術戦略グループ プロジェクトマネージャー 高橋寿和氏)とする。

 太陽電池は,船体を覆う甲板カバーや風力を利用するための帆などに搭載する計画である。甲板カバーや帆は,不要な際に収納する必要がある(図7)。このため太陽電池には,折り曲げが可能なフレキシブルな特性を求めている。さらに,甲板カバーや帆の面積は3万1000m2であり,この面積で発電量が平均1M~2MWの太陽電池の搭載を見込んでいる。その実現には光電変換効率30%が必要になるという。

図7●効率30%でフレキシブルな太陽電池が必要
図7●効率30%でフレキシブルな太陽電池が必要
太陽電池には,光電変換効率30%,折り曲げが可能といった厳しい仕様を要求する。海上での塩害や風圧などにも耐えなければならない。日本郵船のデータ。

 現在,宇宙用であれば,変換効率が約30%の多接合タイプの化合物型太陽電池が存在する。ただし,地上用の太陽電池に比べて2ケタほど高価な上に,フレキシブル性を備えていない。実現には,さらなる研究開発が必要になる。多くの船舶が同様の太陽電池を搭載するとなれば,太陽電池の開発が活発になるだろう。

燃料電池が主動力に

 主動力源の燃料電池の種類は現時点で未定だが,固体酸化物型燃料電池(SOFC)や溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)といった高温で動作する燃料電池を想定している。排熱を回収して発電機を駆動するためである。水素を燃料とする場合,液体水素や有機ハイドライドといった液体状態で利用することを想定している。

 燃料電池を,コンテナと同じ形状としたのが特徴である。寄港した際にほかのコンテナと同じように,容易に地上に運び出すことができるからだ。運び出した 燃料電池は,新たな燃料電池と交換する。これにより,燃料電池のメンテナンスを地上で実施できるようになる。メンテナンス時間を削減して,停泊期間を削減するのが目的だ。船のエネルギー利用量は,スピードの3乗に比例する。できるだけ不稼働時間を減らして,余裕を持ってゆっくりと運行すればCO2削減効果が高くなる。