「2050年にCO2排出量ゼロの船舶を実現するべく,2008年から取り組みを本格化した」(日本郵船の小杉氏)。太陽電池を搭載する次世代船を相次いで発表するなど,CO2排出量の削減に積極的な海運業界。日本郵船は,2008年からの6年間で700億円の巨費を投じ て,CO2排出量削減に挑んでいる。
異なる国の間の物流を支える国際海運は,京都議定書の枠外とされ,国別削減目標の数値に含まれていない。船や乗組員の国籍,燃料の注入地域が多様なた め,義務付ける国を定めるのが難しいからである。一方で,国際海運全体のCO2排出量は8.5億トンと,前出のようにドイツ一国分に匹敵するほど多い。日本郵船の国際海運だけでも,北海道電力と同等のCO2排出量となっている。
日本郵船がCO2排出量削減に向けて独自の取り組みを始めたのは,今後国際海運が国別削減目標の数値に含まれるなどの事態を想定してのことである。日本郵船と同様の動きが世界の海運会社に広がれば,船舶が太陽電池などのエネルギー関連デバイスの普及と技術開発をけん引することもあり得るだろう。
ここでは,船舶でのエネルギー関連技術の導入計画について,日本郵船の取り組みを通して紹介する1)。
CO2排出量の大幅削減へ
国際物流の9割は海上輸送を利用している。同じ量の荷物を運ぶ場合,海上輸送は鉄道やトラックに比べてCO2排出量が少なく,環境にやさしい輸送方式となっている。しかし今後,先進国に加えて新興国が経済発展を遂げることで,海運需要は年率3%で増加する可能性がある(図3)。