国内の多くのエレクトロニクス企業は,リーマン・ショック以降の世界的な不況に苦しみつつも,その影響からようやく脱出しつつある。だが,日本のエレクトロニクス産業が抱える大きな課題はまだ解決されていない。それは,今後10年の技術開発をドライブする製品分野はいったい何なのかという問いの答えである。

デジタル化と薄型テレビの10 年

 CEATEC JAPANが始まった2000年以降,日本のエレクトロニクス産業は機器のデジタル化に邁進してきた。半導体の微細化技術を背景に,薄型テレビやデジタル録画機,デジタル・カメラ,携帯電話機といったいわゆるデジタル家電は,年を追うごとに高機能・多機能化され,小型で安価で使いやすい製品に進化し続けてきた(図参照)。

 その象徴がテレビの薄型化,デジタル化だろう。シャープが,液晶テレビの「AQUOS」ブランドを登場させたのは2001年である。以降,同社はテレビのデジタル化,液晶パネルの大型化やいわゆる「フルHD」対応といった高精細化競争で業界をリードし続けた。地上デジタル放送が東名阪で始まった2003年以降のCEATECの会場は,さながら薄型テレビ,そしてデジタル家電の展示場と化した。

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アナログ停波で一区切り

 2000年から始まった10年間を支配したテレビの薄型化とデジタル化という大きな流れは,2011年7月に予定される「アナログ停波」で一つの区切りを迎える。既に,国内向けに出荷されるデジタル・テレビはデジタル化と薄型化がほぼ完了しており,2011年に向け,普及率を100%に近い水準に近づけていく段階に入る。

 こうした状況を受け,ここ数年のCEATECでは「ポスト薄型テレビ」となり得る大型商品が模索されてきた。しかし,今のところは残念ながら,その明白な答えは見つかっていない。「ポスト薄型テレビはやはりテレビ」という声も聞かれる。

 技術は一朝一夕に進歩しない。歴史をひもとくと,現在につながる技術の多くは,2000年前後に相次いで登場している。つまり,次世代につながる萌芽は,既にその姿を見せている可能性が高い。ここでは,日経エレクトロニクスの記者10人が,次世代を担う可能性のある新技術・新製品を選び,今後10年の可能性を解説する。

―― 次回へ続く ――