それは,USB 3.0の最大データ伝送速度が,5Gビット/秒と高速であることに起因する(図4)。5Gビット/秒という速度があれば,1080pのHD動画を非圧縮で伝送できる。つまり,HDMIの独壇場だったHD動画ストリーム伝送の用途を,USB 3.0で代替できる可能性があるのだ。

図4 2009 ~2010年に次世代仕様が登場
図4 2009~2010年に次世代仕様が登場
民生機器で利用される機器間インタフェースやパソコン内部で利用されるインタフェースのデータ伝送速度の推移を示した。2009年から2010年にかけて一斉に高速化される見込みである。なお,2009年以降は本誌予測。
図5 USBで映像データを送る
図5 USBで映像データを送る
映像データの出力端子として,USB2.0を利用する例が増えている。写真は,2009年1月に開催された「2009 International CES」でのASUSTeK社の実演である。ノート・パソコンから3台のモニターに映像データを出力している。

 既に,現行のUSB 2.0を,映像出力端子として利用する例がある。米DisplayLink社は,USB 2.0での映像伝送を可能にする技術を開発しており,複数のノート・パソコンやモニターが採用済みだ(図5)。USB 3.0になれば,「HD動画の非圧縮伝送を実現できるだろう」(DisplayLink社のマーケティング担当者)と意気込む。USB 3.0向けIPコアの開発を進める米Synopsys社も,USB 3.0によるHD動画の伝送システムを試作している注1)

注1) このほか,USBとHDMIは,コネクタの大きさもほぼ同一だ。次世代HDMIで新たに導入される小型コネクタ仕様「Type D」(仮称)の大きさはMicro USB並みである。

 それだけではない。USB 3.0の仕様作りを進めたUSB Implementers Forum, Inc.(USB-IF)は,さらなる高速仕様の策定を計画している。その伝送速度は,「10G~20Gビット/秒になる」(USB-IFの関係者)という。これにより,USBは複数のHD動画ストリームを伝送できるだけの伝送容量を確保する。こうした伝送速度の高速化からは,パソコンや携帯機器のみならず据置型AV機器までにも搭載機種を広げようとする狙いが見える。

表1 各分野でひしめく機器間インタフェース
表1 各分野でひしめく機器間インタフェースの仕様

 携帯機器分野における次世代HDMIとUSB 3.0の争いは,将来のインタフェースの勢力地図を左右する。このため,多くのエレクトロニクス・メーカーが,両仕様の内容や,その採用動向に目を光らせている(表1)。

―― 次回へ続く ――