松下電器産業や三洋電機が手掛ける,安価な車載CCDカメラを使った周辺視界支援システムの実用化のカギを握るのは,このような画質低下を自動車メーカーが許容できる水準に抑えることができるかどうかだろう。これらのシステムは「ECUに搭載するASICで,主要な画像処理機能を実行する」(松下電器産業 パナソニック オートモーティブシステムズ社 商品開発センター 第七設計グループ 第一設計チーム主任技師の吉岡健司氏,図5)。このASICでどこまで高い画質を実現できるかがメーカーの腕の見せどころである。松下電器産業はシステムの開発に10年程度前から取り組んでおり,ASICの開発を既に終えている。「いつでも実用化できる」(同社 パナソニック オートモーティブシステムズ社 商品開発センター 第七設計グループ グループマネージャーの西川均氏)と自信を見せる。
これらのシステムの売り物は「どのような性能のカメラであれ,ある程度対応できる」(西川氏)こと。松下電器は,画質の低下を極力防ぐ工夫を凝らしたという。例えば,四つの映像の色や輝度のバラつきを補正する。安価なカメラを使う場合,カメラごとの画質がバラつくことが予想される。このため,輝度や色などを平均化する機能などをASICに盛り込んだ注9)。
注9)三洋電機はCCDを用いて,夜間でも視認性が向上する「車載用高感度カメラ」を開発した。27万画素のCCDを使い,従来の8倍の感度に相当する最低被写体照度0.2lxを達成したという。近赤外の波長域の光をカットするフィルタを使わずに実現した。一般に,このフィルタを使用しなければ,近赤外光もカメラに取り込めるため感度が向上する。だが,昼間などでは光量が強すぎて色表現に悪影響が出る恐れがある。三洋電機は新たに開発した画像補整用LSIを使って,明るすぎる環境下でもフィルタなしに色再現性を十分にしたという。