布製ウエアラブル・アンテナ
ケーブルも着脱可能に
図A-1 ウエアラブル・アンテナでMIMO要らず
NECがワンセグ放送の受信に向けて開発した,EMC対策などに用いる導電性布をアンテナ素子とする「広帯域ウェアラブル・アンテナ」。スナップ・ボタンを利用してケーブルを着脱できるものも試作した。右上の黄色の布に付いた曲がったアンテナ素子は,190MHz帯の「デジタル・ラジオ」を受信するためのもの。アンテナ素子の寸法を波長に合わせて変えることで,最大4GHz程度の周波数を用いる無線にも対応できるという。いずれも製品化は未定。

 携帯電話機にMIMOを利用する無線方式を実装する技術が不透明な中,NECはMIMO技術に頼らずに端末のデータ伝送速度を確保するためのアンテナを開発している。ほとんどが布から成る「広帯域ウェアラブル・アンテナ」がそれだ。一般的な布の上にアンテナ素子として導電性の布を縫い付け,さらにフレキシブル・プリント基板に用いる銅(Cu)箔をアンテナ素子とケーブルとの接続に用いたもの(図A-1)。導電性の布は一般的な布をめっき処理したもので,EMC(電磁妨害)対策に用いられているという。

 アンテナと携帯電話機の接続には一般的なケーブルを利用するが,衣服で使われるスナップ・ボタンで着脱できるようにする。ケーブルを取り外してしまえば,大型のハンカチやスカーフと同様に折り畳める。服の裏地に張り付けるか,カバンやバッグに作り込むことも検討する。

 寸法は,アンテナ素子の1辺の長さを1/4波長にしていることから,利用する周波数帯で決まる。現時点では,「ワンセグなど地上デジタル放送用の補助的なアンテナとして製品化を検討している。性能はロッド・アンテナと同等」(NEC モバイルワイヤレスネットワーク事業部 グループマネージャーの倉本晶夫氏)。

 地上デジタル放送の場合,電波の波長は最大約64cmであるため,アンテナ素子の長さは約16cmとなる。「アンテナ素子を小さくして2G~4GHz帯ぐらいまでは対応できることを確認済み」(倉本氏)で,携帯電話機のデータ通信やモバイルWiMAXなどにも利用できるとする。

 MIMO用アンテナとして利用できるかについては「この大きな外部アンテナを利用すれば,わざわざ携帯電話機でMIMO技術を使わなくてもが十分な通信性能が得られる」(倉本氏)と主張する。

――次回へ続く――