ドイツのDaimlerChrysler社は、東京モーターショーで燃料電池を4割小型化した燃料電池ハイブリッド車のコンセプト「F600 HYGENIUS」を発表した(関連記事)。「40%小型化した新開発の燃料電池スタックを搭載し、加速性能、最高速度、航続距離などの動力性能が、既存のパワートレーン採用車と競える初めての燃料電池車」(研究開発部門トップのThomas Weber博士)であることが特徴だ。
燃料電池の出力は60kW、これに最大55kWのリチウムイオン電池を搭載することで最高出力85kWのモータを駆動する。モータの最大トルクは350N・m、リチウムイオン電池の電圧は200~270Vだ。水素タンクは充てん圧力が70MPaで後部座席下に2本のタンクを搭載する。約4kgの水素を貯蔵でき、航続距離は400kmを超えるという。また、最高速度は170km/h以上である。
同社は燃料電池、モータなどを自社開発しているが、今回最も特徴的なのが燃料電池スタックだ。従来の燃料電池はセパレータに黒鉛を用い、電解質膜を挟んでいるが、これをステンレス製とした。ステンレス製にしたメリットはスタックのサイズを小さくできることだ。F600 HYGENIUSでは100個のセルを重ね合わせたスタックを4個用いているが、「ステンレス製のセパレータは1枚が0.15mmと非常に薄く、一つのセルでは1mm程度の厚さにしかならない」(DaimlerChrysler社燃料電池システム部門のAndreas Docter博士)。これにより、燃料電池スタック全体の大きさを40%削減できた。
金属製のセパレータは、既にホンダが自社開発の燃料電池「Honda FC STACK」(関連記事)で採用しているが、製造はプレス成形により行えるとしていた。この点は、DaimlerChrysler社も同様で、プレス成形によりコルゲート状に流路を形成することで、低コストで製造できるという。
電解質膜も改良し、従来のタイプよりも水分が少なくて済む材料を新開発した。ただし、この材料の詳細については明らかにしていない。このほか、燃料電池に空気を送り込むポンプは、従来のスクリュ型コンプレッサから新開発の電動ターボチャージャに変更した。従来タイプに比べ、大きさが1/3になった上、重さは1/7で、駆動ノイズも低減できたという。
ボディサイズは、全長4348×全高1700mmでホイールベースは2900mm。試作車は1台しかないが、2006年11月よりテストコースで実験を始める予定だ。
【東京モーターショー】DaimlerChrysler社、燃料電池を4割小型化した「F600 HYGENIUS」コンセプト
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