マツダは,東京モーターショーに出展したコンセプト・カー「先駆(せんく)」で,色素増感型太陽電池を内蔵したガラス・ルーフを搭載した。色素増感型太陽電池は太陽光を透過するために室内に光が届き,曲面のある形状に作れるので,ガラス・ルーフに用いても問題はないとする。今回のコンセプト・カーでは後部座席付近の天井部分だけを色素増感型太陽電池を設けており,数十Wの出力を稼いでいる。太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率は6%~7%という。今回の太陽電池は自社内で研究開発を進めると共に,自動車部品メーカーと協力して今回のガラス・ルーフに仕立てた。色素増感型太陽電池の技術はほぼ完成しており,現在は歩留まりを高めるための生産技術の確立や信頼性試験を通しての寿命評価を実施しているとする。

 マツダによれば,自動車に太陽電池を積む意味は大きいという。「自動車に搭載する電子機器が増えており,消費電力が大きくなりつつある。太陽光を利用すれば省エネルギーにつながる。最近はハイブリッド車に代表されるように,エネルギーの利用効率を高めることに消費者の関心が高いので,太陽光エネルギーを利用することは受け入れられるはずだ」(同社の説明員)。同社は1991年に発売した「センティア」でアモルファスSiによる太陽電池を内蔵したサンルーフを採用したが,曲面を作れないというデザイン性の低さや,省エネルギーに対する市場の要求が弱かったことからそのほかの自動車には広がらなかったとする。

 今回の色素増感型太陽電池の変換効率は,Si技術による一般的な太陽電池よりも低い。マツダは実用化のころには同効率を8%以上に高めるとするが,それでもまだ劣る。ただし,色素増感型太陽電池は天井部分全面やサイド・ガラス,リア・ガラスにも使えるので,「変換効率の低さを面積で補える。最近,欧州車をはじめ,国産車でも大型のガラス・ルーフを搭載する例が増えており,色素増感型太陽電池を使える場所も広がっている」(同社の説明員)という。

右側のストライプ模様のガラス・ルーフに色素増感型太陽電池を内蔵する
右側のストライプ模様のガラス・ルーフに色素増感型太陽電池を内蔵する
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