電源の制御をデジタル化するデジタル電源の広がりや、エネルギーの有効活用などに向けた双方向電源の導入など、電源の制御設計の重要性が高まってきた。様々なアプリケーションに対応する電源システムを構築するには、電源の普遍的な制御理論を熟知し、設計する必要がある。制御理論を知ることで、電源の高効率化や小型化、そして性能への影響を最小限に抑えつつ低コスト化することも効果的に進められる。
 今回、「技術者塾」では電源の制御理論を踏まえ、スイッチング電源制御設計の基礎を効果的に学べるセミナー「電源制御と主回路の定式化手法」を企画した(2015年9月28~29日開催、詳細はこちら)。同セミナーの講師を務める九州工業大学大学院 生命体工学研究科 准教授の安部征哉氏に、制御理論を熟知する重要性などを聞いた。(聞き手は日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

九州工業大学大学院 生命体工学研究科 准教授の安部征哉氏

――電源の高効率化や小型化、低コスト化を進めるには、電源の制御設計についての理解度を高める必要があると聞きます。

安部氏 電源の制御設計には電源の普遍的な制御理論を熟知して設計することが重要です。電源に携わっている技術者の皆さんと話をしていると、制御理論について結構理解している人とそうでない人の2層に分かれているように感じます。しかも、理解している人は少数派で、制御理論をあまり知らない人の方が多数派です。システムの技術者も電源を取り扱いますが、電源をシステムの構成部品の1つとして捉えており、制御理論に踏み込むことはほとんどありません。「購入して取り付ければ動く」という認識だと思います。

 しかし、電源を単に部品として取り扱っていると、電源起因の問題や他社に対して差異化する機器設計へ対処できなくなってしまいます。電源起因の不具合が生じる、電源の性能をフルに活用する必要が出てくる、といった状況になって初めて制御理論をしっかりと勉強しようと動き始める開発現場が多いと感じています。

――電源の制御理論を学習する機会は十分にあるのでしょうか。

安部氏 電源の制御理論に関する良書といわれる書籍は以前からあります。ただし、これまでの書籍の内容は難しく、多々出てくる計算を理解するのはとても大変です。大学で電源を学んできた私でさえ、長く電源を勉強してきてやっと理解できるくらいでした。