日経Automotive Technology誌で、「自動車メーカー戦略分析」と題したコラムをIHS Automotiveのアナリストに執筆してもらっています。主に海外メーカーが対象で、最新号では韓国Hyundai Kiaグループを取り上げました。

 2000年代に急成長したHyundai Kiaグループですが、この2年は低成長にあえいでいます。2013年のグループ全体の世界販売台数は711万台。前年と比べて1.2%増にとどまりました。2009年から2011年まで年率15%と驚異的な成長を続けていましたが、2012年の2.7%増に続き、2013年も低い成長。背景には同グループが得意とした新興国市場で伸び悩んだことに加えて、この数年は品質の向上を最優先に据えて、生産能力の増強を抑えてきたことがあります。

 追い打ちをかけるように、お膝元である韓国市場の雲行きも怪しくなっています。Hyundai Kiaグループのシェアが減り、輸入車の販売が急増中です。同グループは利益の半分以上を韓国市場で叩き出し、その稼いだ利益を海外市場に投資することで急成長してきました。韓国市場のシェアが下がることで利益が減れば、これまでの成長モデルが崩れかねません。

 岐路に立つHyundai Kiaグループですが、今後のカギを大きく握るのは自国で稼いで海外に投資する得意の成長モデルを続けられるのかどうかにありそうです。その成否について今回のコラムを執筆した川野義昭氏は、ブランド戦略にあると見ます。現在、韓国市場で攻勢をかけているのが欧州の高級車メーカーで、利益率が高いD/Eセグメントの車両でHyundaiグループは打撃を受けているためです。こうした高級車メーカーと伍して戦うにはブランド力が必要というわけです。

 そんなブランド向上を目指した取り組みの一例が、高級輸入車販売店が連なるソウル市江南区に2014年に開設したショールーム「Hyundai Motorstudio」。車両の展示にとどまらず、カフェや蔵書室、アートギャラリーなどを併設。販売目的というよりは自動車文化の普及を狙ったものに見えます。「商売に貪欲」なこれまでのHyundai Kiaグループにはなかった新しい試みで、ブランド力の向上に本気で取り組む意思表示と言えます。とはいえ、ブランド力を高めるには数年単位の時間がかかります。今後、地道な活動をどこまで積み重ねていけるのかが試されています。