有機エレクトロニクス 機器を劇的に薄く、軽く、柔らかくするコア技術
 

飛躍する有機エレクトロニクス

野澤 哲生=日経エレクトロニクス
2014/06/23 00:00
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 有機エレクトロニクスの実用化を取り巻く状況は明るい話と暗い話が入り組んでおり、一見すると混とんとしています。

 暗い話とは、大型有機ELテレビ事業についての話です。2014年春になって、韓国Samsung Electronics社、ソニー、パナソニックが相次いで事業を凍結するという一部報道がありました。本当なら「有機ELテレビドミノ」とでもいうべき残念な状況ですが、各社が正式に発表したわけではありません。パナソニックは2014年6月のSID 2014でも、55型4K有機ELテレビのバックプレーン技術について講演しています(関連記事)。発表を聞いた技術者の何人かは「優れた技術発表だった」と感想を述べていました。ただし、講演者に有機ELテレビ事業の行方について直接聞いても「一切ノーコメント」でした。本当にすっかり止めるつもりであれば、隠すことはないはずです。

 各社の意思はともかく、大型有機ELテレビは市場の中で位置付けが難しくなっているのは否定できません。精細度や大型化では液晶テレビに及ばず、低価格化では大きな差を付けられています。大きな強みだったはずの色再現性の高さも、液晶テレビが量子ドットという強力な武器を得たことで、少し色あせてみえます。Samsung Display社に至っては、SID 2014に105型の曲がった液晶テレビを出展。大型有機ELテレビの存在理由は今やなくなりつつあります。ポスターみたいにクルクル巻ける超高精細の大型テレビができれば状況は変わりますが、実現にはもう少し時間がかかりそうです。

あの企業がフレキシブル有機ELディスプレーを採用か

 一方で、明るい話は枚挙にいとまがありません。例えば、有機半導体材料の研究開発では「50年に1度」(九州大学 教授の安達千波矢氏)という技術革新が進んでいます(関連記事)。課題だった青色発光材料の効率や寿命を飛躍的に高める手法が複数見つかっており、材料のコストも大幅に低減する可能性が高いです。

 有機トランジスタ向けの半導体材料や製造技術も急速に向上しています。「これから有機トランジスタは、量産段階に入る」(SID 2014に参加したある技術者)という状況の中、キャリア移動度で10cm2/Vs前後の値が珍しくなくなり、20cm2/Vs超も報告例が出てきました(関連記事)。これは、InGaZnO TFTなどと肩を並べる値です。

 デバイスの実用化でも大きく前進しています。例えば、有機トランジスタには、“金脈”となる用途が見えつつあります。それは、医療・ヘルスケア用途で服や体に貼って使う「スキン型センサー」。なぜフレキシブルかという問いに、これほど適格な回答はなかなかありません。

 近未来ではなく、今まさにブレーク寸前にあるデバイスもあります。ウエアラブル端末向けの小型フレキシブル有機ELディスプレーです。例えば、米Apple社は2013年前後に、フレキシブル有機ELディスプレーを利用する腕時計型ウエアラブル端末に関する特許をいくつか公開していますが、それを実現する製品、おそらく「iWatch」が近く発表されるという噂が業界を駆け巡っています。高精細で広色域、かつフレキシブルなディスプレーを実現する技術は、現時点では有機ELに限られます。対抗技術も出てくるかもしれませんが、少なくとも当面は有機ELディスプレーの独壇場になりそうです。
 
 有機ELを照明として利用する用途でも、いよいよ蛍光灯を超える発光効率のパネルが量産段階を迎えています。日本ではコニカミノルタ、海外では韓国LG Chem社などが実用化を牽引。パナソニックは、出光興産との合弁会社を清算した一方で、有機EL照明の研究開発は逆に強化。今回のSID 2014では、10cm角で発光効率133lm/Wの照明用パネルを開発したとの発表内容に、質疑応答の時間に会場から「この発表を聞けて大変幸せだった」と称賛のコメントが相次ぎました。

 何よりも参加者の心に響いたのは、コニカミノルタの139lm/W、パナソニックの133lm/Wという数字以上に、それらがまだ通過点に過ぎず、200lm/Wという非常に高い値さえも実現の可能性が見えてきたという点だったかもしれません。

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