前回はゼンリンの子会社で3次元地図データを専門的に手掛けているジオ技術研究所を紹介した。新しい3次元表示の方法やAR(拡張現実感)表示の最適化など、地図データの可能性を広げるこうした取り組みは、親会社のゼンリンでも進行中である(前回参照)。今回は、自動運転車の実現に欠かせなくなりそうな高精度地図データについて紹介する。

 ゼンリンは、2013年10月に東京ビッグサイトで開催された「第20回 ITS世界会議 東京2013」で自動運転車に向けた高精度地図データを開発していることを明らかにした。その地図データを制作しているのが、ゼンリンの地図データの編集・管理をしている「ゼンリンテクノセンター」である(第2回参照)。

 自動運転車は、大手自動車メーカーが中心に2020年をメドに実用化を狙い、開発にしのぎを削り始めている。各社が開発中の自動運転車では、車載センサーの情報と地図データを照合して自車位置を数~十数cmと高い精度で推定する仕組みを用いる場合が多い。例えば、自動運転で先行した米Google社が開発中の自動運転車では、3次元地図データが運転の精度向上に大きな役割を果たしているとされる。

米Google社が開発中の自動運転車

 数年前までは多くの自動車メーカーが自動運転というよりも、先進運転支援システム(ADAS)の開発に注力していたため、車載センサーとGPSだけで精度を高めようとしてきた。ところが、より高度な自動運転車の需要が高まってきたことで、GPSの受信環境が悪い場所や、車線レベルでの車両制御には、高精度な地図データが不可欠との認識が浸透しつつある。