JR九州が2013年10月15日から営業運転を開始した豪華寝台列車(クルーズトレイン)「ななつ星in九州」は、かなりの高額であるにもかかわらず、大変な人気を博している。
 その車両のデザインを担当した水戸岡鋭治氏に、ヒット商品を生み出すのに必要な考え方、デザイナーの立場で機械技術者に期待するものを話していただいた。

(ななつ星in九州の企画の経緯などは前回掲載)
関連記事を日経ものづくり2014年1月号に掲載)

――著書で仕事に取り組むときの姿勢や心構えについて書いておられますが、機械技術者をどのように見ておられますか。大量生産の仕事が韓国や中国に取られてしまって、高品質なものに追いやられているっていう感じの人が相当いるような気がするのですが。

「ななつ星in九州」(JR九州)の車両をデザインしたドーンデザイン研究所代表の水戸岡鋭治氏
写真:尾関裕士

水戸岡氏:高品質って今に始まった話ではなくて、以前日本から世界に飛び出していったものって、みんな高品質ですよ。ソニーの「Walkman」にしたってクルマにしたって、カメラにしたってみんな高品質で、その当時は世界で最高のものを造って出していたわけじゃないですか。むしろ、今は高品質のものを造ろうとしてないですよね。

 そのころは何が高品質だったかというと、機能的にすごくてデザイン的にもすごい、そういう価値の高いものを造っていたわけです。世界で誰も造ってないものを造った。今は、日本で造っているものも韓国で造っているものも、中国もヨーロッパも、変わらないじゃないですか。どこにもないオンリーワンのもの、ではないんですよ。

 日本の機械技術者さんとかメーカーの方が造っているのは“製品”であって、“商品”は造っていない。“製品”を造るのはそんなに難しくないですよ、答えが見えているんだから。だって値段はこうしようとか、この重さにしようとか、この機能付けようとかって全部分かっているわけですから。要するに試験勉強と一緒ですよ、答えが存在している中でものを造っているんですよ、予測できる範囲で。