今回はフィンランドNokia社のことを書こうと思う。言わずと知れた携帯電話の大手であり、名前も存在も知らないという読者は恐らくいないことだろう。当コラムでも、EMS(電子機器受託生産)世界最大手、台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕の子会社や、携帯電話ODMの台湾Compal Communications社(華宝通信)がNokia社のフィーチャーフォンやスマートフォン(スマホ)の生産を手がけているということを「ノキアのスマホは来たけれど」と題して紹介するなど、何度か取り上げてきた。ただ今回改めて思ったことがある。それは、Nokia社の携帯電話を実際に使ったことがある、という読者は、日本には意外に少ないのではないだろうか、ということである。

 私が初めて携帯電話を持ったのは1990年代の後半のこと。当時住んでいた香港では、Nokia社、米Motorola社、スウェーデンEricsson社が大きなシェアを握っており、この3社以外のメーカーは影が薄かった。私も初めての携帯にはNokia社を選んだ。

 ところが、当時日本に一時帰国して携帯ショップをのぞいたり、街で人が使っているのを見ても、わずかにNokia社の端末を店頭で1~2種類見かけた程度で、大半は日系メーカーの端末だった。ひとくちに携帯電話市場と言っても、香港と日本ではずいぶん事情が違うんだなと思ったことを覚えている。

 1998年から携帯電話の世界シェア首位を続けたNokia社だったが、米Apple社の「iPhone」の登場で台頭したスマホへの対応が遅れ、シェアを落とし始めたのは周知の通り。2012年にはついに、韓国Samsung Electronics社に抜かれ、首位を陥落した。

 調査会社の米IDC社が2013年10月29日に発表した統計によると、同年第3四半期には、フィーチャーフォンとスマホを合わせた携帯電話全体のシェアではSamsung Electronics社の24.5%に次ぎ、13.8%で2位にとどまっている。ただ、スマホではトップ5から漏れている。