今回でこのコラムの最終回だ。2011年5月から始まった同コラムでは「中国発のイノベーションはどのように生まれたのか、どのような特徴があるのか、今後どのような展開になるのか」といった切り口で、技術、経営、国民性、食文化など多岐に渡り、中国の実像、その背景を日本の多くのメディアと違う視点で届けてきた。いつの間にか同コラムのスタートから2年半が経過。知らず知らずのうちに合計30本(最終回含む)の記事を執筆していた。

 振り返ってみれば、このコラムの執筆を手掛けたことで、イノベーションの本質、中国流のイノベーションの特徴、中国と日本の現在と未来などについて考える機会をもらえたと思う。最終回となった今回は、同コラムの執筆を通じて筆者が考えてきたことや、その後の状況変化について紹介したい。

2年半で状況は大きく変化

 1回目の「『リンゴの皮』から何が見えるか」が掲載された時、米Apple社のスマートフォン「iPhone」は正に絶好調の時期だった。そのときの「りんご」の「美味しさ」は「皮」までも及んでおり、iPhoneへの熱狂によって中国では「りんごの皮520」という電子製品が生まれていた*1

*1 リンゴの皮520は、SIMカードが差し込まれたケース状の電子機器。このケースに「iPod touch」を装着すると、通話やショート・メッセージ・サービス(SMS)といった機能などを追加して“iPhone化”できる。iPhoneに比べて安価なiPod touchに通話・メール機能を付け加えるこの製品は、瞬く間に中国で大きな人気を博し、IT業界をも驚かせた。

 それから2年半、iPhoneの全盛期は過ぎつつある。同時にその間、中国では「小米」に代表される多種多様なスマートフォンが誕生(「小米」というスマートフォン)。中国ブランドの一部のスマートフォンは、遂に日本市場でも販売されるまでに成長してきている。2年前には、正直このような状況になるとは想像できなかった。