前回に引き続き、技術出身の調達・購買担当者が果たすべき役割について未来調達研究所取締役の坂口孝則氏に語っていただいた。そうした現場の知見を調達・購買に生かしている最近の事例として、同氏は米Apple社を挙げる。(聞き手は、高野 敦=日経ものづくり)

――技術出身の調達・購買担当者が活躍する場は、今後広がっていくと思っていいのでしょうか。

坂口孝則(さかぐち・たかのり)氏
未来調達研究所取締役。大阪大学卒業後、電機メーカーおよび自動車メーカーで調達・購買活動に従事。未来調達研究所 取締役。アジルアソシエイツ 取締役。調達・購買業務コンサルタント。製品原価・コスト分野の専門家。調達業務の理論的構築を行う。製造業を中心に調達・購買戦略構築やサプライヤー・マネジメント等のコンサルティングを手掛ける。著書は『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『調達・購買の教科書』(同)など、23冊。

坂口氏:それでいうと、「開発購買」はまさにそうですね。開発購買という言葉は個人的に嫌いなのですが、その開発購買で面白い事例だと思ったのは米Apple社です。

 開発購買というのは、技術部門が製品開発の上流段階から調達・購買部門やサプライヤーと一緒に新技術を開発していく取り組みですが、これまでは主に自社の調達・購買部門やサプライヤーの技術者を巻き込んでやるものだと思われていました。しかし、Apple社は何をやっているかというと、サプライヤーの調達・購買担当者とも一緒に開発購買を実施しているのです。

――サプライヤーの調達・購買担当者も参加している。

坂口氏:そうです。Apple社からすれば、日本の電子部品メーカーの調達・購買担当者と一緒に活動しているわけです。サプライヤーの技術者だけではなく、調達・購買担当者もいるというのが珍しい。

 例えば、部品の原材料調達について最も詳しいのは、調達・購買担当者です。だから、原材料レベルから部品を新規開発しようというときには、最初からサプライヤーの調達・購買担当者を入れておいて、彼らの意見を取り入れつつ進めるのです。これは、新しい形の開発購買だなと思いました。