オープンソース的な手法を取る「MAKERS」の出現は、既存のメーカーにどのような影響を及ぼすのか。未来調達研究所取締役の坂口孝則氏によれば、そうした手法は直ちに主流にならないが、開放すべき部分も少なくないという。さらに、話題は技術出身の調達・購買担当者への期待に移る。(聞き手は、高野 敦=日経ものづくり)

――これまで挙げていただいた4つのポイントに基づいて調達・購買を変革していくと、その先にどのようなものづくりの姿が見えてくるのでしょうか。

坂口孝則(さかぐち・たかのり)氏
未来調達研究所取締役。大阪大学卒業後、電機メーカーおよび自動車メーカーで調達・購買活動に従事。未来調達研究所 取締役。アジルアソシエイツ 取締役。調達・購買業務コンサルタント。製品原価・コスト分野の専門家。調達業務の理論的構築を行う。製造業を中心に調達・購買戦略構築やサプライヤー・マネジメント等のコンサルティングを手掛ける。著書は『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『調達・購買の教科書』(同)など、23冊。

坂口氏:いきなり話が飛ぶのですが、『WIRED』誌の元編集長であるChris Anderson氏が『MAKERS』(邦題も同じ、NHK出版)という本を書きましたよね。

――日本でもヒットしました。

MAKERS』(NHK出版)

坂口氏:『MAKERS』に登場する事例で面白いと思ったのは、オープンソースで自動車を造ろうとするLocal Motorsというメーカーと、MFG.comという製造受託のWebサイトです。

 そのうちLocal Motorsの何が面白いかというと、工業所有権の固まりであるはずの図面やCADデータを、全世界に向けて公開することです。そうすることで、無数のサプライヤーや個人に設計を改善してもらったり、見積もりを提出してもらったりして、進化するわけです。

 私なりの理解だと、これまで多くのメーカーは現場で改善を進めてきました。ところが、インターネットを利用することによって、全世界の人が改善活動に参加するような仕組みを構築できるようになったわけです。