チーム結成。まずは名刺交換から。
チーム結成。まずは名刺交換から。
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このチームは早くも手が動き始めた。
このチームは早くも手が動き始めた。
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一方で、なかなか手が進まないチームも見受けられる。
一方で、なかなか手が進まないチームも見受けられる。
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順調に見えるが、この進め方には重要な問題が…。
順調に見えるが、この進め方には重要な問題が…。
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今回最も高かったタワー(机の面からマシュマロの高さが56cm)の測定。
今回最も高かったタワー(机の面からマシュマロの高さが56cm)の測定。
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 既存の枠組みを超えたイノベーションを生み出す思考法として関心が高まっているデザインシンキング。そのセミナー会場で突如、乾燥パスタやマシュマロが用意されます。これから調理実習が始まる、わけではありません。限られた部材を用いて数人のチームでなるべく高いタワーを作る「マシュマロ・チャレンジ」というチームビルディングの演習です。

 セミナー参加者の方々が急遽5つのチームに分けられました。マシュマロ・チャレンジは、TED Conferenceにて紹介されたことをきっかけに急速に広まったチームビルディングの演習で、使用できる部材は乾燥パスタ20本(自由に切断しても構わない、交換も可能)、粘着テープ(90cm、自由に切断できるが補充はできない)、ひも(90cm、同)、そしてマシュマロです。これらの部材だけを用いて机の上になるべく高いタワーを構築して、マシュマロがある位置の高さを競います。

 各チームに与えられた時間はたった10分(公式ルールでは18分)。自己紹介もそこそこに、早速タワーの製作に取り掛かります。素人目には各チームが同じように試行錯誤しているように見えますが、講師陣にはうまくいきそうなチームとそうでないチームがすぐに分かるとのこと(見分けるコツは演習自体のネタバレになってしまうので、ここでは伏せておきます)。実際、作業の手が進むチームと考え込んでしまうチームの差が少しずつ出てきました。

 そうこうしているうちに、制限時間が過ぎました。今回、マシュマロの位置が最も高かったタワーの高さは56cm。10分という公式ルールよりも短い制限時間を考えれば、これはまずまずの結果とのこと。チームのメンバーは達成感に満ちあふれた表情です。ところが、次の瞬間に雰囲気が一変します。講師の1人である富田欣和氏〔慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科非常勤講師〕がある女子高校の新入生を対象に同じくマシュマロ・チャレンジを実施したところ、その最高記録は70cmだったというのです。他にも50cm台を記録したチームが複数あったそうです。

 たった1回ずつの結果なので、統計学的な正確さはともかくとして、なぜ経験豊富な大人たちのチームの結果が女子高校生たちのチームの結果よりも軒並み悪いのでしょうか。その1つの要因として、経験豊富な大人ほど綿密に計画しようとするのに対し、女子高校生は失敗を恐れずに挑戦するという違いがあります。マシュマロ・チャレンジのように使える時間や部材などが限られているプロジェクトでは、挑戦→失敗→フィードバックというサイクルを素早く何度も繰り返すことが成功のカギとなります。つまり、失敗を回避して綿密に取り組もうとする姿勢が、実は成功を妨げてしまっているわけです。

 画期的なアイデアをチームで生み出すためのデザインシンキングでも、全く同じことがいえます。だからこそ、今回のセミナーでマシュマロ・チャレンジを行ったわけです。2013年7月3日に開催するデザインシンキングのワークショップは、やはりチームとして「男性用美容家電」というテーマで議論するプログラムになっています。こちらの模様も後日報告したいと思います。