かつてのテレビ・メーカーでは、「国や地域によって放送方式が異なるため、それぞれで開発する方が効率的」という考え方が当たり前。でも、最近では「一極集中した方がコスト面で効率がいい」という見方が多いようです。

 背景には、半導体技術の進化でほとんどの放送方式を1チップに集積できるようになったことがあります。つまり「同じ値段なら載せておけばいいじゃん。その機能、使うかどうか分からないけど」ということです。スマートフォンの通信方式も最近では同じ状態。デジタルの世界では、「作り分け」を考えること自体が意味を成さなくなっているわけです。

 そもそも自社開発どころか、「EMS/ODM(機器の受託生産)企業」に開発設計もお任せしちゃおう。その方がさらに効率的だ」という考え方だって、それほど珍しいものではなくなりました。技術の進化と、生産に関する世界的動向の変化が、ソニーに限らず大手テレビ・メーカーの頭を悩ませています。

 自動車と家電という製品分野、そして取り組みの深度に違いはあるにせよ、「放送方式」を「環境規制や安全基準」と書き換えたりしてみると、何となく相似形の印象も拭えません。「開発を開国する」ことによる変化を、ホンダはかつてない改革によって乗り越えていくということなのでしょう。

 ホンダの取り組みが象徴する近未来のクルマの方向性を、安全性や環境性能を高める基準/規制という切り口で“予測”した記事も好評でした。アクセス数の第3位に入った『日経Automotive Technology』の林達彦副編集長の記事「激変する世界の規制と基準から5年後のクルマを見通す」です。

なぜ、欧米の規制を追いかけることが多いのか

 これからの5年間、安全面では“ぶつからないクルマ”が当たり前になっていく。林副編集長は、こうまとめています。規制や基準によって、自動ブレーキやリアビューカメラ、車線逸脱警報などが次第に必須の機能になるというのです。

 これは、自動車免許を取る時、普通よりも多額の費用を教習所に投資した私のようなドライバーには朗報。技術の進化で“ぶつからないクルマ”が本当に現実になっていけば、残る大敵は新機能を導入した安心感によるドライバーの油断だけでしょう。

 ただ、クルマの隅々まで神経網が行き届き、タイヤが手足のようになっている自動車好きのドライバーには、もしかすると「余計なことを…」という話なのかもしれません。いつもTech-On!のクルマサイトで議論が盛り上がる自動運転に通じる話題でもあるからです。

 この記事では、「なぜ、欧米の規制を追いかけることが多いのか」と指摘する、次のような読者からの声もありました。