リーマンショック以降の超円高や東日本大震災、タイの大洪水、尖閣諸島を巡る中国との摩擦など、日系自動車メーカーは逆風に晒され続けてきたが、アベノミクスによる円安効果もあり、徐々に反抗体制を整えつつある。

 「日経ビジネス」「日経Automotive Technology」「日経エレクトロニクス」の3誌は、円安の追い風を受け始めた日系自動車メーカーの今後の戦略を「新興国攻略」と「規制対応」という2大テーマに焦点を当て、書籍「徹底予測 次世代自動車2013」にまとめた(書籍の詳細はこちら、雑誌読者の方はこちらから割引価格で購入可能、出版記念セミナーの詳細はこちら)。

 このコラムでは、円安の追い風を受ける日系自動車メーカーの戦略や世界の自動車産業で起きている技術革新、規制動向などを見ていく。5回目は規制動向について。

 世界の規制や基準への対応は、自動車の技術進化を促す起爆剤だ。今回は主に安全分野と環境分野の世界の規制や基準の動向に焦点を当て、今後5年のクルマの形を予想する。安全分野では大型車で自動ブレーキの義務化が始まり、乗用車でも自動車アセスメントに組み込まれることで当たり前になる。一方、厳しい燃費規制に対応するため、エンジンの排気量ダウンサイジングが加速しそうだ。

 今から5年後に登場するクルマがどんな機能の搭載を増やしていくのかを予測してみよう。

 安全技術では予防安全と衝突安全の強化が進み、前者では自動ブレーキ、歩行者検知、リアビューカメラ、タイヤ空気圧警報システム、車線逸脱警報などによって“ぶつからないクルマ”が当たり前になっていく。

 後者では25%と小さいオフセット量で衝突しても安全性を確保するボディ、転倒時にもルーフがつぶれにくい構造などが実現する。

 環境技術では、引き続き強化される燃費規制と排ガス基準に対応することが求められる。エンジン車では、ターボチャージャーによる過給で排気量をダウンサイジングする傾向が強まりそうだ。

 一方、最近は実際の走行における燃費や有害物質の排出量が、表示した燃費やクリアした規制値とかい離する問題が起きている。燃費や排ガスの性能が利用実態とかけ離れないようなクルマづくりが求められる。

高速ツアーバス事故の影響

 こうしたクルマの変化の原動力となるのが、安全性や燃費・排ガスといった環境性能を高めるための日欧米における基準や規制の強化である。例えば大型車では欧州が、2013年11月から新型車にAEBS(先進緊急ブレーキ)の装着とLDW(車線逸脱警報)の装着を義務付け、その2年後の2015年から継続生産車に適用する。

 日本でも、翌年の2014年からトラック、バスの両方において同様のシステム(日本での名称は衝突被害軽減ブレーキ)が義務化される。大型トラックに関しては2012年3月に法規が決まっており、2014年11月から新型車へ、2017年11月から継続生産車への適用が始まる。さらに2012年4月29日に関越自動車道で起きた高速ツアーバスの事故の影響もあり、バスもトラックと同じ時期に導入を始める。