シャープが2013年3月6日、韓国Samsung Electronics社との資本・業務提携を決めた。Samsungの日本法人が、シャープの第三者割当増資を引き受け、出資比率3.04%に相当する約103億円を出資。シャープはSamsungに対し液晶パネルを供給するという内容だ。

 両社提携のニュースは、シャープ本体に対する9.9%(約660億円)の出資交渉が難航しているEMS(電子機器受託生産)世界最大手、Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕のお膝元である台湾でも大きく伝えられた。

 シャープとの提携交渉を進めるに当たり、フォックスコンの郭台銘董事長が「台湾と日本が組むことで、韓国に対抗していこう」と日本側に呼びかけていたことは、当コラムでも「『VSサムスン』中国と台湾の温度差」「シャープとの提携はEMSの終わりの始まりか」「日本へのメッセージ」などの回で取り上げてきた。さらにフォックスコンは、シャープ堺工場に対する出資は2012年7月に済ませ、共同運営している。それだけに今回のシャープの決定を台湾側が、「よりによって韓国のSamsungか」と受け止めているのではないかということは容易に想像がつく。従って、今回の提携を報じる台湾メディアには「裏切り者」「寝返った」などといった感情的で激しい言葉が並ぶのではないかと想像していた。ところが「シャープ・フォックスコンの恋に愛人出現」とSamsungを揶揄する見出しはあるものの、事実関係を淡々と伝えたり、今後の展開を予想するなど、総じて抑え目の報道が目立つ。

 『日本経済新聞』(2013年3月7日付)は、郭氏が同月5日に堺工場で予定していた奥田隆司社長、片山幹雄会長とのトップ会談をキャンセルしたと報じた。シャープ側はこの会談でSamsungとの提携を郭氏に伝えるつもりでいたが、情報を事前にキャッチした郭氏が激怒しキャンセルしたものだという。

 これに対して台湾の夕刊紙『聯合晩報』(2013年3月7日付)は、フォックスコン関係者の話として、郭氏が同月7、8日の両日、奥田社長、片山会長と日本で会談すると報じた。この原稿が出るころには、1年に及んだ提携交渉の決着がついている可能性もあるが、いずれせよ、同月26日に迫ったシャープ本体に対する出資期限を前に、最後の交渉を静かに見守ろうという配慮が、台湾メディアに働いているのかもしれない。

 台湾メディアの反応については、当社もウェブサイト閲覧には会員登録が必要2週間無料で読める試用会員も用意)で「シャープ・サムスン提携 台湾の視座・1『鴻海はシャープと提携継続を』専門家ら提言」など何本か記事を載せているので、興味のある向きは参考にされたい。