正直なところ、ものすごく胸が痛かった。「なにくそ」っと心底思った。

 「また来るから、待ってろよ!」

 その時点でまだ何の確約もできない僕は、継続することの大切さを胸に刻み、それを実現できる仕組みを構築することを心から誓った。

 被災地の訪問からほぼ20日後の2011年5月9日。長尾氏らと一緒に「プロジェクト結コンソーシアム」という一般社団法人を発足した。産官学が連携し、東北の子どもたちの遊びと学びを支援するというコンセプトの下に。(プロジェクト結のFacebookページはこちら

 メンバーのほとんどがどこかの(大)企業に属し、本業の傍らで「自分の立場(本業の肩書き)を隠さず」に活動している。自らのビジネス・スキルを活用して社会貢献活動に参加する「プロボノ」と呼ばれる参加形態だ(プロボノについては連載第5回の「あなたの専門スキル、眠らせていませんか」を参照。記事はこちら)。約10数名のプロボノや学生で始まった活動は現在、賛同87団体と賛同者42名、運営ボランティアスタッフ約30名で構成されている。

 主な活動は、子供たちの放課後の学びと遊びの場をつくる「日常支援」と、子供たちや地域の人々を元気づけるイベントを企画・開催する「非日常支援」の二つである。プロボノによる活動を軸に、企業のリソース活用を念頭においているからこそ、「『やりたい人』が『できること』を『やれるだけ』やる」「“復興支援”などと大きく構えず、子供たちに寄り添いながら、一緒の時間を過ごす」というコンセプトを続けることができているのだと思う。

ありがたいけれど、残念なこと

 ここにきて、活動も広がりを見せている。石巻市の中学校から要望があり、職業講話も始めた。これは、職業人が自分の仕事の内容や仕事観を話すキャリア教育の一環。専門性を備えた職業人が飾らずに自らのありのままを子供たちに伝える。どんな職業人の話も子供たちにとっては、未知の世界であり、宝の山だ。逆に子供たちの前で話した大人にとっても、率直な眼差しや問いに触れることで学ぶことが多い。

 賛同する企業・団体が保有する専門スキルを用いた支援も手掛けている。例えば、NECは小学校の総合学習のテーマで「福祉」を学ぶ題材として「盲導犬キャラバン」を実施している。

 この他、夏休みや冬休みには、福島県の子供たちを対象にした「アカデミーキャンプ」も開催した。震災と原子力発電所の事故で、屋外で心おきなく遊ぶ機会が少なくなっている子供たちに「遊びと学び」で笑顔になってもらおうという取り組みだ。ここでも、さまざまな企業や団体に専門性を生かした支援をいただいている。

 ただ、そうした取り組みの中でも、残念に思うことがある。それは、社会人がボランティア活動に参加するハードルの高さだ。少し前に「自分の立場(本業の肩書き)を隠さず」と書いたのには理由がある。これは「必ずそうしなければならない」という決まりではないのだが、「そうあってほしい」という願いを込めている。