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アジアの産業に成長したFPD(3)日本はFPD産業のリーダー役を担うべき

北原 洋明=テック・アンド・ビズ
2012/05/31 12:30
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前回から続く)

 FPDの市場はグローバルに成長し、製造拠点はアジア各地に広がった。FPD業界が今後取り組むべきことは、世界の産業に育ったFPDをいかに成熟させていくかである。FPD技術は発展途上にあり、決して完成されてはいない。様々なディスプレイが身の周りのあらゆる所に使われるようになる「多様化の時代」では、ディスプレイ技術も多様化し、これまで以上の開発が必要になるだろう。これまでにない新たな価値を持つ技術や製品を作り出していく努力が重要になる。先駆者としてこの産業を立ち上げてきた日本には、その経験を生かして、理想となるFPDの姿を完成させていく役割を担う覚悟が求められる。さもなければ、これまでFPDにかけた情熱と努力は、単なる過当競争の闇の中に消えていくだけである。

進化を続けるFPDを支えるのは「技術」

 2000年代後半、FPDテレビの画面サイズの大型化競争は続いていたが、先進国のFPDテレビ市場はほぼ飽和状態に近づきつつあった。この頃、FPD関連企業はテレビの次の新しい事業の柱にしようと、FPDに類似した技術と産業構造を持つ太陽電池に猫も杓子も(装置・材料メーカーだけでなくパネル・メーカーまでもが)参入した。

 FPDと太陽電池は、技術や産業構造は似ているが、製品の性能という視点から見ると大きく異なっている。太陽電池はFPDと同様に出力デバイスであるが、極論すると、製品の出力である発電量が唯一の性能指標になる。ところが、ヒューマン・インタフェースであるFPDには、20項目にも上る表示性能が要求される。最近のモバイル機器向けのFPDには入力機能も加わり、その操作性や携帯性も重要な性能指標になっている。このため、これまで以上に技術開発が重要視され、技術力が今後の製品競争を左右する。一時、太陽電池に方向転換しようとした企業でも、FPDの奥深さと継続的な開発の重要性を認識し、新たな戦略を練っているところが多い。

 FPD産業は、過去からの技術蓄積が多く、途中から参入して簡単にキャッチアップできるような生やさしい産業ではない。ある程度成熟した産業であれば、優秀な経験者を採用することで、効率的に技術を吸収できる。しかし、FPD産業はまだ伸び続ける産業であり、技術進歩も速い。このFPD産業で次々と技術革新をしていくためには、技術者個人の能力だけではなく組織的な力が重要となる。特に、モバイル機器向けが中心の中小型パネルでは、従来技術よりも難易度の高い低温多結晶Si(LTPS)技術や有機EL技術の課題解決に取り組むことになる。これらの技術に特化した高いスキルを持つ技術者が、材料、駆動回路設計、プロセス技術をはじめとする多くの課題の解決に、チームワークを発揮して取り組むことが必要になる。

ハイテク技術の価値を見直し、ビジネス・モデルの再構築を

 FPD産業や太陽電池産業の中核であるパネル・メーカーのビジネスは、現在とても厳しい状況にある。最先端技術を持ちながら産業のスマイルカーブのボトムに位置しており、利益を出せないでいる。多くの企業がFPDの重要性を認識しながらも、ビジネスには迷いを持っている。

 FPDの技術や製品の基礎は、日本が作り上げた。同時に、産業チェーンも日本の中で完成させた。上流の装置・部材から、中核となるパネル、下流のセット(応用機器)の製造および最終製品市場までのすべてが日本の中にそろっていた。そして、中核となるパネル製造には、「ハイテク」の言葉に魅せられて多くの企業が参入し、熾烈な開発競争と投資合戦を繰り広げてきた。この結果、技術の進歩と市場の拡大は進んだが、供給過剰と価格低下の圧力を受けながら現在のスマイルカーブ構造も出来上がった。そこに韓国、台湾さらには中国からも多くの企業が参入するにつれて、スマイルカーブの底はますます深くなり、消耗戦の泥沼に陥ってしまった。

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