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エディターズ・ノート

テレビの再定義

  • 内田 泰=日経エレクトロニクス
  • 2012/04/26 10:22
  • 1/1ページ

 最近、新聞などのメディアでは、テレビに関して国内大手家電メーカーの事業不振の話題ばかりが取り上げられている印象があります。無理もありません。国内メーカーのテレビ事業は抜本的な改革がいよいよ「待ったナシ」の状況にあるのは事実ですし、復活への明確な戦略が見えていないのも厳しいところです。

 とは言え、テレビをこうしたネガティブな側面からのみ見ていると、本質を見逃してしまうかもしれません。2011年7月の地上デジタル放送への完全移行後、国内市場は停滞感だけが漂っていますが、米国などでは新時代の「テレビ」を創出する取り組みが活発化しており、資金も動いています。テレビは今まさに大変革の真っただ中にあるのです。

 核となるのは、もちろんインターネットです。「国内ではテレビとインターネットの融合について、既に10年以上前から取り組みが始まっているが、ビジネスとして大きく成功した例はあまりない」との指摘があるかもしれません。確かに以前は、テレビとインターネットの融合をベースに魅力的なサービスを提供しようと思っても、それを下支えする技術要件などが不足していました

 しかし、技術に関してはここ数年でかなり整ってきました。例えば、動画配信の「MPEG-DASH」やソフトウエア記述言語の「HTML5」などの標準技術です。こうした技術の実用化は、大画面テレビの変革に大きなインパクトを与えると共に、製品の位置づけ自体に「再定義」を迫ります。

 従来、映像コンテンツを再生する役割は、大画面のテレビがほぼ独占していたのですが、これからの時代はどこにいても、さまざまな端末で高品質の映像をインターネット経由で楽しめるようになります。利用者にとっては、スマートフォンだって「テレビ」の一つです。このとき、大画面のテレビはどのようなユーザー体験を提供すべきなのか、テレビと同じリビング・ルームにあるスマートフォンやタブレット端末とどう機能を分担をし、大画面ならではの価値をどう提供するのか。こうしたテーマが、製品開発の肝になるでしょう。

 既に、日韓の大手テレビ・メーカーからは、「スマートテレビ」としてさまざまなインターネット対応製品が提案されていますが、まだ大きな成功事例は出ていません。だからこそ、次世代テレビでは多くの企業にビジネス・チャンスがあるのです。インターネットとの融合によって、テレビ・メーカーの収益性が大きく改善するかどうかは分かりません。しかし、従来の売り切り型ではない、新たな収益モデルを発掘できる可能性は大いにあります。

 近い将来、大画面テレビのHTML5対応が進めば、非常に多くのアプリケーション・ソフトウエアを再生できるようになるでしょう。私見ですが、このとき、米Microsoft社のモーション入力センサ「Kinect」のような距離画像センサが搭載されたスマートテレビがあれば面白いと思います。距離画像センサを使ってユーザーの動作を認識し、それを応用したスポーツのシミュレーション・ゲームやコーチングのアプリなどは、人気が出るのではないでしょうか。

 元・米Google社副社長兼日本法人社長の村上憲郎氏はこう言います。「今、日本では若者のテレビ離れが進んでいる。しかし、テレビを面白くするアイデアはいくらでもある。若い人たちには、古いやり方をぶち壊して、テレビの世界を面白くしてほしい」。そう、今こそ次世代テレビの開発に向けて、多くの技術者に挑戦してほしいと思います。

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