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日本のメーカーはフレキシブル・エレクトロニクスで勝てるか

野澤 哲生=日経エレクトロニクス
2012/04/06 10:10
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 最近、液晶テレビや太陽電池に象徴されるように、かつて日本が高いシェアを誇っていた製品も主導権を韓国、台湾、中国メーカーに握られてしまっています。それどころか、シェアを握る前の製品化の時点で日本メーカーが出遅れてしまったのが大型有機ELテレビです(関連記事1)。

 では、日本には戦える技術、製品はもうないのか。ここで胸を張って「いや、あります。それは…」と言えればよいのですが、部品・部材レベルではともかく、最終製品となると歯切れの良いことはなかなか言えません。

 可能性があるとすれば、それはフレキシブル・エレクトロニクスかもしれません。この分野は今、激しい開発競争が始まっています。具体的には、
・フレキシブルなディスプレイ(関連記事2関連記事3)、
・フレキシブル電子ペーパー(関連記事4)、
・フレキシブル有機EL照明パネル(関連記事5関連記事6)、
・フレキシブル太陽電池(関連記事7)、
・RFIDタグを含むさまざまなフレキシブル電子回路(関連記事8関連記事9)、
・皮膚のようなセンサ・シート(関連記事10)、
・これらのデバイスと組み合わせて利用するフレキシブル2次電池(関連記事11

といった製品分野です。

 こうした製品が実現すれば、従来の「固い」製品になかった新市場や使い方が出てくるでしょう。例えば以前から提案されているように、学校やオフィスで使われている、天井に巻き上げるタイプのプロジェクタ用スクリーンのようなディスプレイ。窓の位置に設置すれば、昼間は窓、あるいはそのブラインド代わり、夜は(窓の大きさの)テレビという面白い使い方ができるはずです。

 日本にはこれらの製品の開発を早くから目指してきた研究者やメーカーが少なくありません。例えば、有機EL照明技術の開発を牽引する山形大学 教授の城戸淳二氏がそうです。城戸氏は、「ディスプレイの大型化の次のトレンドは、フレキシブル有機ELディスプレイになる。フレキシブル・エレクトロニクスでだけは日本メーカーは負けてはならない」といったことを最近よく訴えています。実際、フレキシブル・エレクトロニクスの驚くような試作品が2000年代前半からいくつも発表されてきました。しかし、実用化競争で今の日本に絶対的優位性があるかといえば、残念ながらそうではなくなっています。

心の障壁が停滞を生む

 日本では試作品は出てきても、製品はなかなか出てきません。時間ばかりが過ぎていく中、海外の研究者やメーカーが技術で追い付きつつあると感じるニュースが増えてきました。そして、ついにフレキシブル電子ペーパー・パネルの量産では、韓国LG Display社に先を越されてしまいました(関連記事12)。

 新技術の開発で先行しながら、製品化で負ける、というのは過去に繰り返し見てきた風景です。その要因としてはいろいろな議論があるでしょう。気になるのは、最近ある研究者から「日本の半導体技術者には、フレキシブル・エレクトロニクスというだけで一段下に見る向きが多い」という指摘を受けたことです。フレキシブル電子回路というだけで安っぽい技術とみなされるので、わざわざ固い基板で研究するのだそうです。固い基板からフレキシブル基板へ、技術者の乗り換え競争が起こってしかるべきこの時期に、後ろ向きの雰囲気に覆われていたのでは、海外メーカーとの競争に勝つのは難しいでしょう。

 幸い、部品・部材レベルではまだ、素材に強い日本メーカーに技術的な優位性があるといえるでしょう。例えば、透明導電フィルムです。ただしこの分野も、韓国Samsung Electronics社のグループ会社がグラフェン・シートの量産に近づくなど猛追しています。うかうかはしていられないようです。

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