激しい競争が続く半導体業界。現在、論理LSI市場を席巻しているのが、「ファブレス半導体企業」+「ファウンドリー企業」の組み合わせによる、いわゆる水平分業型のビジネスモデルです。前者の代表例はFPGAベンダーで、後者では台湾TSMCや米GLOBALFOUNDRIES社などが有名です。一方、垂直統合型の体制を持つ国内半導体企業は、ここ最近、メディアを賑わす機会が増えています。DRAM価格の低迷を受けて、従来より突っ込んだ業界再編を模索中のエルピーダメモリや、東日本大震災以来、BCP強化などの観点で事業構造改革を進めるルネサス エレクトロニクスです。もっとも、垂直統合型の体制を持つ国内半導体企業の中には、ソニーの撮像素子など、世界でも屈指の競争力を持つ事業も存在します。

 機器メーカーにとっては、ファブレス、ファウンドリーといった水平分業型企業、そして垂直統合型企業と、今後どう付き合っていくべきか、改めて問われる時期が来ています。この答を出すべく、日経エレクトロニクスは、2012年2月8日に東京・品川(コクヨホール)で、世界の大手半導体メーカーのトップが一堂に会するグローバルな国際会議「世界半導体サミット@東京 2012」(関連URL)を開催します。

 登壇者を紹介します。
エルピーダメモリ 代表取締役社長CEOの坂本幸雄氏
ルネサス エレクトロニクス 取締役執行役員常務 研究・開発統括の矢野陽一氏
ソニー 業務執行役員 SVP イメージセンサ事業部長の上田康弘氏
GLOBALFOUNDRIES社 CEO のAjit Manocha氏
TSMCジャパン 代表取締役社長の小野寺誠氏
Altera社,Senior Vice President and Managing DirectorのJordan S. Plofsky 氏
IBM社 Vice President, Technology Development in SRDCのPercy Gilbert 氏

 エルピーダメモリの坂本氏は、言わずと知れた、国内半導体業界を代表する経営者の一人です。どん底にあった同社を世界第3位のDRAM企業へと立て直した実績を持ちます。DRAM価格の極端な低迷により、現在、より踏み込んだ事業構造改革を進めています。最近、海外のメモリ・メーカーとの再編などに関する報道が続いており、まさに「時の人」と言えるでしょう。

 ルネサス エレクトロニクスから登壇いただく矢野 陽一氏は、同社の研究開発のトップを務めます。同社は、ここにきて、事業の軸足を、従来の民生向けから、今後はインフラ向けへとシフトする姿勢を明確にしています。これまでにも増して、技術戦略が重要になる中、今回の講演では、同社の向かう先について、技術を中心に語っていただきます。

 ソニーの上田氏は、同社のイメージ・センサ事業の責任者です。ソニーは、裏面照射型CMOSセンサや超高速CMOSセンサの開発で世界に先駆けるなど技術力で世界ナンバーワンの座を保ち続けています。先日も、同社は裏面照射型CMOSセンサに信号処理チップを積層する新技術を発表したばかりです(Tech-On!関連記事1)。この技術発表会において、メインで説明を行ったのが上田氏です。ソニーは、技術開発のみならず、設備投資にも積極的です。東芝から半導体製造設備を買い取るなどして、2011年度に約1000億円の投資をCMOSセンサの生産能力増強に向けて実施しています。しかも、ソニーの上田氏によれば、前述のCMOSセンサと信号処理チップを積層する技術を製品適用した場合、信号処理チップの製造を外部に委託できるようになるため、現行の生産キャパシティでも、CMOSセンサの生産量を飛躍的に増やせるようになるとのことです。海外のファウンドリー企業も成長分野であるCMOSセンサの製造に力を入れ始めていますが、CMOSセンサに特化して1000億円の設備投資を行うソニーが、技術と生産能力の両面で大きくリードしています。上田氏から、力強い説明が聞けると確信しています。

 一方、LSIの生産を受託するファウンドリー企業であるGLOBALFOUNDRIES社からは、CEOのAjit Manocha氏が来日します。ファウンドリー企業は圧倒的な生産能力により、世界のLSI生産を一手に引き受け始めています。LSI生産の受託に伴い、生産委託元から技術ノウハウや知見を入手しやすいことも手伝い、ファウンドリー企業は技術力でも世界の先頭集団に入りつつある状況です。GLOBALFOUNDRIES社は、ニューヨーク州の新工場「Fab 8」で初期生産を開始したことを2012年1月に発表しています(Tech-On!関連記事2)。

 ファウンドリー最大手のTSMCからはTSMCジャパンの小野寺氏が登壇します。今回、諸般の事情から、台湾TSMC本社の経営トップが来日することができない状況ですが、小野寺氏にはTSMCの世界戦略を語っていただきます。

 ファブレス企業を代表してご講演いただくのが、FPGA大手ベンダーのAltera社, Senior Vice President and Managing DirectorのJordan S. Plofsky 氏です。微細化の進展とともに、FPGAによるASICやASSPの代替は着実に進んでいます。ここ最近は、FPGAへのARMコアの搭載が話題を集めています。今後も、FPGAへの他回路の集積化の流れは止まりそうにありません。FPGAのロジック・ファブリックの他に、マイクロプロセサ・コア、DSPコア、特定用途向けIPなどの統合が急速に進んでいきます。まさに「ロジック・ファブリックを超えて」進化するFPGAの姿が示されることでしょう。

  IBM社から登壇するVice President, Technology Development in SRDCのPercy Gilbert 氏には、半導体製造技術の動向について語っていただきます。半導体の進化の源泉は、製造技術の微細化が担ってきました。今後もしばらくはその構図は変わりません。研究開発力で世界をリードするIBM社の講演で、同社の開発動向をご理解いただけます。

 以上のプログラムにご興味をお持ちになった方々、ぜひともご参加いただけますと幸いです(関連URL)。