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新 誠一=電気通信大学教授
2012/01/05 14:00
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 明けましておめでとうございます。2012年が始まった。昨年は日本激励からコラムを始めた。そして3月に東日本大震災が起こり、ひたすら激励、激励の一年となった。

 震災、円高、洪水と踏んだり蹴ったりの日本の製造業にとっての2011年。しかし、日本の製造業は試練を乗り切った。凄いことである。内容留保が厚いのか、経営者が優秀なのか、要因としていろいろ考えられる。けれども、現場力が優れていることは明白である。世界に例を見ないボトムアップ経営、世界が羨ましがっている。日本万歳である。

 大震災級の事件が起きなければ、昨年は飛躍の年となるはずだ。今年も同様であろう。しかし、世の中甘くは無い。ユーロで拡大した欧州は不安定さを増している。破裂するか縮小するか。どちらにしても、欲しいのは現金。投資の回収に忙しい1年となるだろう。そして、金融という仮想の世界を弄んだ米国は内憂を抱えている。ひたすら守りだろう。昨年、チュニジアに始まってリビアに至るアラブの春と命名された革命下の中東は落ち着かない。イランの核問題も抱えている。アフリカは、まだ早い。

 頼りはアジア。インドも中国も発展している。ASEAN、台湾も堅調である。韓国は頑張っているが、軋みも抱えている。しかも、北方に問題を抱えている。

 アジアは発展するだろう。しかし、数十億の民が日本やアメリカ並みの豊さを目指している以上、大変動は避けられない。発展は気候を変動させ、エネルギー、資源のバランスを崩す。この崩れは日本の試練となるだろう。もちろん、日本の試練は世界の試練。2012年も試練の年である。

 目先を広げれば、試練は気候、エネルギーの問題に留まらないことに気づく。大家族から核家族への道程は核分裂に至り個食の時代を迎えている。地縁、血縁が薄れて個人がばらばらになっている。確かにfacebookなどのSNS(Social Network Service) が新たな絆を築きつつある。しかし、分解する秩序と構成されつつある秩序の狭間で人は大きく揺さぶられている。まだまだ落ち着かない。

 10年ほど前、21世紀の始まりに際し未来技術予測を迫られた。いくつかの場で、情報、エネルギー、物質の三階層の変化を公言してきた。具体的には、

  情報 : 独占→共有→公開
  エネルギー : 石炭→石油→メタン
  物質 : 金属→無機→有機

という変化である。誰もが発信できるインターネットは公開への原動力である。そして、石油の時代の終わりと原子力の挫折はメタンの地位を向上させている。演算素子は金属である真空管から無機物であるシリコン、そしてカーボンを経て有機物に移りつつある。自動車などの筐体も高張力鋼板、カーボン、そして樹脂が軽さと強度と値段を軸に競い合う時代を迎えている。

 予測の当否はともかく、我々が変革の時代にいることは共通の認識だろう。明日は今日とは違う。もちろん、昨日とは大きく異なる。変化の時である。それなのに、学生は安定企業を探している。誰も30年後に残っている企業を保証できない現実の中で。

 変化の時は試練の時である。ぬるま湯は偽物の跋扈(ばっこ)を許す。試練は真贋を明らかにする。昨年の混乱を通して、日本の製造業の力は本物だと感じた。時間はかかるが、日本の力が認知されていく年になりそうである。もちろん、日本もいろいろ問題を抱えている。波乱の年である。よろしくお付き合い頂ければ幸いである。皆様のご多幸をお祈りする。

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