明けましておめでとうございます。本コラムは辛口と位置付けられている。しかし,委縮した日本に辛口では先細り。委縮時は甘口が適当かもしれない。実際,甘口論評が散見されるようになってきた。それに天邪鬼(あまのじゃく)を自任する身には辛口ばかりでは飽きが来る。少し甘口を味わってみよう。そんな訳で,今回は新年,甘口の言い訳に初夢語り。

 まずは,現実。先月,シンガポールの学会に参加した。旧知の教授に学生ともども大変お世話になった。夜はオーチャード通りの高島屋の地下で横浜カレーをご馳走になった。その後,紀伊国屋に連れていかれてジブリのDVDを薦められた。そして,ソニーショップで最新ビデオカメラに関する蘊蓄(うんちく)をお聞きした。最後はマツダのアテンザに乗せられてオーチャード通りのクリスマスイルミネーションを見た。このイルミネーションは観光誘致のために政府が費用を出しているそうである。もっとも,そのイルミネーションには「Hitachi」の文字が輝いていた。

 次は初夢。2020年,世界中でお財布スマートフォン(スマホ)が使えるようになった。決済は全て,これ一発。電車に乗れば,スマホで皆がメールやニュースのチェック。もっとも,大多数はスマホゲーム。世界中が豊になり,少子化。草食系が花盛り。その先進国で名高い日本の実態と対策の調査が盛況。2008年のリーマンショック時は金融について1992年の日本のバブル崩壊の二の舞はしないといっていた世界が,2020年には日本のような無縁社会にはならないと宣言。

 Tech-On!が主たる関心としている日本の製造業は,総生産量ではアジア諸国に抜かされている。もっとも,完全自動化路線は国内では放棄し,人と機械の密接な協調を軸に据えた高付加価値品の製造に特化している。製造現場は,10年前のPSPやDS,スマホ,そして「Wii」のコントローラもどきがHMI(Human Machine Interface)として活躍中。

 各国が日本の高度技術インフラの高さを真似にくるが,人材のスキル不足のため,ゲームスキルの製造業への広範かつ高度な活用には追い付けない。携帯,ゲーム文化を浸透させた日本の先見性に各国が高い評価。その日本に付いてきたのは韓国だけ。もっとも,日本の半分の人口では追い抜けない。

 日本は元来,本流の文化は評価されない。狩野派は評価されず,下卑た文化である浮世絵が評価され,印象派からモダンアートまで大きな影響を与えている。能も,歌舞伎も落語も現在は人間国宝級の文化だが,江戸時代は河原乞食とさげすめられてきた。もっとも,正当から異端に落ちた堕天使が異端を体系づけ,豊にしてきた。堕落せよ天使たち。

 パチンコ,カラオケ,プリクラ,アニメ,コスプレ,フィギュア。いずれは人間国宝か。卑屈と増長。遣隋使に国風文化。ユーラシア大陸の東の端。籠ったり,出たりの繰り返し。本コラムも,辛口一本槍では難しい。甘辛,硬軟,とり混ぜて技術を切っていきたい。本年もよろしくお願いします。