生産技術力は低下している?

 最後に、ランキングではないが2007年度から調査設問に加えたマーケティング力と生産技術力についての業界別の傾向を確認してみよう。図5は「自社のマーケティング力は高いか?」と「自社の生産技術力は高いか?」というシンプルな設問に対して開発者や設計者から得た回答結果である。まず、マーケティング力については3年前と比較して高くなったと感じている人が多い業界と低くなったと感じている人が多い業界が半数ずつになった。自動車部品業界のマーケティング力が高まっているのは、生き残りをかけて系列以外の自動車メーカーにも積極的に売り込みをかけているサプライヤーも増えているため必然的にマーケティング力の向上が求められた結果と推測される。一方、生産技術力については自動車部品業界以外の多くの人が「自社の生産技術力は低下した」と感じているという結果になった。技術伝承の課題や製造部門の海外移転などが大きく影響していると思われるが、この傾向が今後も続くのか懸念される。また、海外移転という観点では、製造部門のみならずグローバル化という名のもとに開発部門も対象にされつつあることを考えると、このままでは開発力も年々下がっていくという事態を招くことになりはしないだろうか。海外に移転させることは事業を継続するために避けられない流れだとしても、国内拠点の開発力や生産技術力を維持する活動にも併せて取り組むべきである。

図5

最後に

 全10回にわたって様々な結果を紹介してきた。これらの結果を、なんとなく普段考えていることや感じていることがそのまま数値に表れただけだと捉えないでほしい。数値に表れることこそがとても重要なのである。「見える化」されていれば、何らかの変化が生じたときに感覚だけで判断するのではなく、よりタイムリーに、より正確に対応することが可能になる。日本の製造業については連載第1回の記事で「ニッポンはがんばっている」と伝えたが、決して楽観できる状況ではないことがその後の各種データの分析結果からあぶりだされてきたのではなだろうか。

 2010年度に調査に参加した企業は個別報告書を参考に、また参加していない企業も本連載記事の内容を参考にして、貴社の発展ひいては日本の製造業の未来のために今何をすべきかをあらためて考えていただければ幸いである。