日本の製造業の優位性はもはや失われたのか? このように言われはじめて久しい中、韓国をはじめとするアジア諸国の追い上げも激しく、また2007年末のサブプライムローン問題やリーマンブラザーズの破綻に端を発した世界的な不況のあおりで、ますます日本の製造業は窮地に立たされていると考えている人も多いことだろう。

 2007年以来3年ぶりに全国的に実施した「第3回開発力調査」は、まさにそんなさなかに開発していた製品を対象とした調査となった。図1はここ数年の日経平均株価の推移である。リーマンショックの後で大きく値を下げているが、日本製造業の開発力も同じように減退してしまったのだろうか? それとも現状維持、あるいは進化しているのだろうか?

図1
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 開発力調査の詳しい内容や実施方法については次回以降の記事で説明するとして、第1回目となる今回は、調査から見えた六つの重要な特徴について紹介する。

プロジェクトの成功率は高まっている

図2
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 図2はアンケート回答者が調査対象となったプロジェクトについて、成功したか失敗したか? QCDの目標を達成したか? などを回答した結果である。各棒グラフとも青色が目標を達成した、灰色がどちらともいえない、赤色が達成しなかったと回答した割合となっている。まずこの結果から、600を超えるプロジェクトの70%近くが成功したと認識されていることがわかる。苦しい時期もなんのその、2007年度の調査結果よりも5ポイント近く増えており、着実にやるべきことを実施している日本の製造業の底力を感じることができる。

変わらぬ品質重視の傾向

 また、2007年度よりも2010年度の調査結果の方が、各項目とも達成度合いが軒並み高くなっている。特にコストの項目の伸び率が高いことは、価格競争に巻き込まれながらも一定の利益を確保するために目標コストを達成しなければならない、という意識の高さによるものと考えられる。さらに、もともと達成度が高かった品質の項目も伸びていることについては、過去3年間に起きた日本製品のグローバル品質問題がきっかけになっていると考えれば納得できるところだろう。ただし、成功度合いと品質、機能の達成度合いが近いことから、相変わらず日本の技術者は品質および機能重視の製品開発をしていることが伺える。

 開発期間の遵守率は改善しているものの決して十分とはいえない。達成度が低いにもかかわらず、プロジェクトが成功したと認識している人が多いことから、開発期間を遵守することは重要視されていないといえなくもないが、実際は、そもそも見積もりが不十分あるいは妥当性が低いため、最初から無理な計画であったと考える方が自然かもしれない。いずれにしても、開発期間や工数の見積もり精度向上やプロジェクトマネジメント力のさらなる強化が必要である。

リソース不足の問題は解消できていない