宮城県の製紙工場の被災状況

 前回のコラムでも述べたが、私は大地震から二週間後、瓦礫撤去のボランティアとして(政治家と名乗らずに)宮城県に入った。現地は主要道路の瓦礫をやっと撤去したばかりだった。港の近くにある製紙工場を見たが、想像以上の被害だった。工場の壁は壊れ、生産された紙が港のあちらこちらに散らばっていた。

 関係者に聴いた話によると、工場の一階部分は被災したものの、二階以上はなんとか無事であり、一階部分を改修すれば工場は機能するだろうとのことだった。

 しかしながら、問題は工場だけではなかった。港や鉄道といったインフラが大きく傷んでいた。工場をいくら復旧しても工場を稼働できないのではないかと思った。産業インフラの復旧は一企業だけで対応できるものではない。やはり政府の力が必要だ!

製紙工場(藤末撮影)。鉄道貨物などが工場の壁際まで流されている。
製紙工場。鉄道貨物などが工場の壁際まで流されている(藤末撮影)。
鉄道は大きく破壊されている。枕木の下の石が津波で流されており、鉄道の修復も相当な労力を使うものと見られる(藤末撮影)
鉄道は大きく破壊されている。枕木の下の石が津波で流されており、鉄道の修復も相当な労力を使うものと見られる(藤末撮影)

半端な支援策では企業は復旧投資を行わない

 私はこのような現場を見た後、東京に戻ってすぐに政府の担当者と話をした。「相当な支援を行わなければ企業は復旧投資をしないのではないか?」と。しかしながら、担当者の回答は「企業経営者は工場の再開を行うと言っている」というものだった。

 私は、その回答が腑に落ちなかったが、役所の人が聴いたその企業経営者の言葉を否定することはできなかった(確かに後日、新聞にも同様な記事が載っていた)。

 そして先日、ある企業経営者にこの政府関係者の話題を出し、「本当に会社は復旧投資をするのでしょうか?」と問うと、その経営者は「藤末さん、経営者が外部に対して工場復旧ができないと言えますか」と強く言われた。経営者の立場を理解しろとの指摘だ。

 確かにその通りである。建前と本音は違う。そのことを私も政府関係者も理解できていなかったのである。

 また、私が会ったエコノミストは「この円高、電力供給の不安定化、余震のリスクなどを考えると、経営者は東北に投資することを株主に説明できないのではないか」と言っていた。

企業誘致はアジアとの競争だ!