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省エネ革命の主要デバイスとして注目される次世代パワー半導体(後編)

南川 明=アイサプライ・ジャパン
2010/02/15 00:00
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前回から続く)

4 パワー半導体はSiからSiCやGaNへ

 世界的なグリーン・ニューディール政策などによってパワー半導体の市場拡大が続いている。その種類はサイリスタ,GTO(gate turn-off thyristor),バイポーラト・ランジスタ(bipolar transistor)などからMOS FET(metal oxide silicon field effect transistor),IGBT(insulated gate bipolar transistor)へと進展し,応用分野も家電製品からOA,産業,医療,電気自動車(EV),鉄道,電力インフラに至る幅広い分野へと拡大してきた。現在,パワー半導体が扱う電力の範囲は数Wのスイッチング電源からGW級の直流送電までに達している。身の回りの様々な電子機器にパワー半導体が使われているのである。

 しかし,従来のSiを使ったパワー半導体は,Siの物性で決まる理論的な性能限界に近づいており,飛躍的な性能向上を期待することが困難になってきた。そこでSiC,GaN,ダイヤモンドなどの材料を使った次世代型パワー半導体に注目が集まるようになっている。例えば,電力変換の際のロスを減らすためにパワーMOS FETの低抵抗化が求められているが,現在主流のSi-MOS FETでは大幅な低抵抗化が難しい。そこでバンド・ギャップが広い(ワイド・ギャップ)半導体であるSiCを使った低損失パワーMOS FETの開発が進んでいる。

 SiCやGaNは,バンド・ギャップがSiの約3倍,破壊電界強度が10倍以上という優れた特性を持っている。また高温動作(SiCでは650℃動作の報告がある),高い熱伝導度(SiCはCu並み),大きな飽和電子ドリフト速度などの特徴もある。この結果,SiCやGaNを使えばパワー半導体のオン抵抗を下げ,電力変換回路の電力損失を大幅に削減することが可能である。例えば,日本では総電力消費の約50%がモーターで消費されているとから,各種モーターやエアコンなどでインバータ化やインバータの高効率化を推進すると,日本だけで原子力発電所4基分(CO2排出量1000万トン)の省エネ効果を期待できるとの試算がある。

5 HVやEVで期待が集まるSiC

 このうち,SiCパワー半導体はSiパワー半導体に比べて電力損失を70~90%削減できると予想されている。さらにSiCは,1kV以上の高耐圧に耐えられることから電力,鉄道,産業用途に適している。特にハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)のモーター駆動用インバータでは1kV程度の高耐圧が必要なことから,SiCパワー半導体に大きな期待が集まっている。これらの意味でSiCパワー半導体は省エネ・デバイスとして重点的に研究開発を進めるべき分野といえる。

 SiCパワー半導体の開発状況は,ウエハー技術とプロセス技術の両面ともかなり進んできた。ウエハーに関しては,エピタキシャル成長の基盤技術が確立し,50~75mm径のウエハーが市販されている。マイクロパイプ欠陥が1個/cm2レベルまで減少してきた。ただし,転位欠陥は特別な条件でしか数百個/cm2レベルが得られない状態である。通常の状態では数千から1万個/cm2程度であり,大幅な減少が急務である。プロセス技術はデバイス製造可能な水準に達しつつある。海外メーカを中心に複数企業が電流4~12A,電圧300~1200V系のSiC-SBD(schottky barrier diode)を市販しており,既に電源回路に組み込まれるようになった。

 残る問題はウエハー価格がSiの数10倍と高価なことだ。現在は米Cree, Inc.がSiCウエハー供給をほぼ独占しており,低価格化のメドは立っていない。HOYAや新日鉄マテリアルズなどがSiCウエハーの供給を始めたところであり,ロームの自社開発に成功したようである。今後の低価格化に期待が集まっている。いくつかの半導体メーカーは数年後にSiCパワーMOS FETの量産開始を検討しており,これらのメーカーは2015年ごろにはSiCウエハーの価格がSiウエハーの数倍にまで下がってくると予測している。

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