電気自動車やプラグイン・ハイブリッド車などの電動車両の市場投入が活発化する中で、その肝を握るLiイオン2次電池の企業動向に注目が集まっている。特に目立つのが、韓国メーカーの攻勢だ。日本メーカーにとっては、DRAMや液晶パネルで韓国メーカーに負けた苦い体験とだぶって見える。

 ソニーが1991年に世界で初めてLiイオン2次電池を製品化して以来、しばらくは同社に加えて三洋電機やパナソニックなど日本メーカーの独壇場だったのが、このところSamsung SDI社やLG Chem社といった韓国メーカーがシェアを伸ばしているのである。

 『日経エレクトロニクス』が2010年1月11日号に掲載した特集「Liイオン電池 新時代へ」によると、日本メーカーのシェアは2000年ごろにはほぼ100%だったが、2003年には約64%になり、2008年度は半分を割りこんでしまった。その代わりに伸びているのが、韓国や中国メーカーで、中でも韓国メーカーは2003年には10%だったシェアを2008年度には14%に伸ばし、業界関係者の間では「そろそろ企業別シェアで、(第2位の)Samsung SDI社が(第1位の)三洋電機を抜くのではないか」と言われ始めたという(pp.38-39)。

 DRAMや液晶パネルと同様に、Liイオン2次電池についても韓国メーカーは日本メーカーが開発した技術に学び、キャッチアップしてきた。そして、キャッチアップどころか、量産技術面ではすでに日本メーカーを上回ってきているという指摘すら出てきている。

 例えば、Liイオン2次電池のこれまでの主要用途である携帯電話機やノート・パソコンといった民生用途向けに大量生産されている「18650」(直径18mm,長さ65mmの円筒型セル)について、「世界で一番いい品質で、一番安いコストで、一番早い短納期で出せるのは韓国メーカーだ」と、Liイオン2次電池の市場・産業動向に詳しいインフォメーションテクノロジー総合研究所副社長の竹下秀夫氏は語る(当社が昨年2009年11月24日に開催したセミナー「AUTOMOTIVE TECHNOLOGY DAY 2009 autumn」における講演より)。

 ここに来て電気自動車という大型用途が開花してきたわけであるが、現状の第一世代と言われる自動車向けLiイオン2次電池は、「18650」などの民生用途向けに培われた技術を使って実用化されたものだ。その意味で、すでに民生分野における量産技術で世界トップを韓国メーカーが行っているのであれば、自動車向け電池でも高い競争力を持つのは当然のことなのかもしれない。

 「仮に同じ製品をヨーイドンで製造したら、品質面・コスト面いずれについてもすでに韓国メーカーは日本メーカーの上を行っている」と竹下氏は言う。韓国メーカーの実力を示す「証拠」として同氏は、自動車用のリチウムイオン電池の量産設備として2010年までに稼動する予定で、すでに設備発注が行われている各メーカーの量産能力を調査したデータの一部を紹介した。

 それによると、生産能力としては、日産自動車向けのオートモーティブエナジーサプライ(AESC)と米GM社向けのLG Chem社の2社が突出しているが、電池容量あたりのラインスピードを見ると、LG Chem社の方が2倍以上速い(このデータについては、竹下氏の論文「電気自動車/ハイブリッド車向けLiイオン2次電池の市場動向」『次世代電池2010』でも紹介されている)。携帯機器向けの「18650」でも、韓国メーカーの製造スピードは2倍であり、この差が自動車向けでも現れているということのようだ。