雑誌 特集

Liイオン電池,新時代へ

狩集 浩志,久米 秀尚,蓬田 宏樹,Phil Keys=日経エレクトロニクス
2010/01/08 09:00
 

Liイオン電池が世界を動かす

第1部<総論>
電動車両で勃興する巨大市場
積極投資と技術開発で勝ち抜く

5年で90倍──。Liイオン2次電池の市場が今,大きく変貌しようとしている。電動車両の市場投入をきっかけに,5年後には3兆円を超える大市場に成長する見込みだ。新規参入メーカーを巻き込みながら,熾烈な技術開発競争が幕を開けた。

2014年に3兆円市場に
電動車両用Liイオン2次電池市場は,2014年に2兆円を超える見込みだ。Liイオン2次電池全体では3兆円を超える市場に成長する。図は,富士経済の資料を基に本誌が作成した。

 2010年秋に,電気自動車「リーフ」を発売する日産自動車。2010年度に5万台,そして2012年度には20万台を生産するという野心的な計画をぶち上げた。Liイオン2次電池の生産量にすると,リーフ1台当たり24kWhの電池容量があることから,20万台分では4800MWhにも及ぶ。これは,現状の携帯電話機向けLiイオン2次電池市場の3000MWhを凌駕する。つまり,たった1車種だけで,市場環境を激変させてしまうというわけだ。

「生産が追いつかない」

 日産自動車だけではない。世界の大手自動車メーカーが,Liイオン2次電池を搭載する電動車両の大規模な量産計画を表明している。米General Motors Corp.は,2010年後半からプラグイン・ハイブリッド車を年間5万~6万台,ハイブリッド車を年間10万台販売する予定だ。

 ホンダも,2010年後半からジーエス・ユアサコーポレーションとの合弁会社であるブルーエナジーでLiイオン2次電池の生産を開始し,「2020年には,先進国での新車販売のうち,ハイブリッド車の割合を50%まで高めたい」(ホンダ)とする。世界の自動車メーカーの旺盛な需要を受けて,電池メーカーは「すべて受けていたら,とても生産が追い付かない」(GSユアサ 経営戦略統括部 課長の沢井研氏)と悲鳴を上げる。

『日経エレクトロニクス』2010年1月11日号より一部掲載

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第2部<世界動向>
巻き返しを狙う韓中米
強気の増産計画が続々

これまでLiイオン2次電池市場を支配してきた日本メーカー。だが,巨大市場の到来を好機とばかりに,世界の国々が関連投資を加速し始めた。特に,韓国,中国,米国が,虎視眈々と巻き返しを狙う。これら3国の動向を探る。

電動車両用途でも躍進する韓国電池メーカー
韓国では,民生機器向けで世界シェア2位のSamsungSDI社と同6位のLG Chem社をはじめ,SKEnergy社やKokam Engineering社が電動車両向けLiイオン2次電池の量産計画を発表している。

韓国編:
電動車両向けで先行するLG Chem社,Samsung SDI社はBosch社と提携

 電動車両向けLiイオン2次電池市場において,2015年に「30%のシェアを確保する」(Samsung SDI Co., Ltd.),「20%以上のシェアを獲得する」(LG Chem, Ltd.)と,韓国電池メーカーが積極的に動きだしている。中でも先行するのが,LG Chem社である。米General Motors Corp.(GM社)が2010年末に発売するプラグイン・ハイブリッド車「Chevrolet Volt」への独占供給が決まったほか,韓国Hyundai Motor Co.のハイブリッド車への供給を始めている。

 GM社のVoltは,2010年末から年間5万~6万台の生産が計画されている。同車には,25万台まで,購入時に政府から7500米ドル(約66万円)の税還付があるため,車両価格次第では好調な販売が期待できる。

『日経エレクトロニクス』2010年1月11日号より一部掲載

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第3部<技術動向>
まずは材料変更で高容量化
将来は500Wh/kgを目指す

電動車両などに向けた大容量Liイオン2次電池の量産計画が,続々と決まっている。まだ,性能は十分ではない。より高容量で安全性に優れるLiイオン2次電池を実現できれば,大きな商機を獲得できる。次世代電池の開発競争が世界中で始まっている。

2030年に500Wh/kgの達成を目指す
研究開発の分野では,正極材料や負極材料を変更した改良型Liイオン2次電池で,200~300Wh/kgのエネルギー密度をまずは目指している。さらに,2030年を目標とした,500Wh/kgのエネルギー密度を実現できる革新的な2次電池の開発に注目が集まっている。

 大容量Liイオン2次電池の需要を見込み,世界各国では巨大な生産計画が続々と決まりつつある。既に多くの電池メーカーが,採用する正極材料や負極材料,セパレータ,電解液などを決定済みだ。多くの場合,これまで携帯機器向けLiイオン2次電池で先行してきた日本メーカー製の材料が採用されることになりそうだ。

 ただし,日本の材料メーカーはこれで将来を保証されたことにはならない。電動車両向けLiイオン2次電池は,ようやく実用化にこぎ着けたばかり。これから本格的な技術開発競争が始まるからだ。

 現在のLiイオン2次電池の性能では,将来の長距離走行可能な電動車両の実現には「物足りない」(自動車関係者)。エネルギー密度をはじめ出力密度,コストや安全面など,まだまだ進化させる必要がある。

 特に,自動車業界でCO2削減の切り札として期待を集めるプラグイン・ハイブリッド車や電気自動車では,現在のLiイオン2次電池では電池容積が大きく,コストも合わない。そのため,現在のLiイオン2次電池の材料系を第1世代とすれば,2015~2020年ごろをメドに現行の2倍となる 200~300Wh/kgのエネルギー密度を狙える改良型Liイオン2次電池を開発し,第2世代として搭載することを目指す。

『日経エレクトロニクス』2010年1月11日号より一部掲載

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