技術力の高さを見せる三菱自動車,アイシンAW
ハイブリッド・電気自動車のメーカーといえば,トヨタがトップであるのはもはや誰もが疑う余地のない事実であるが,ハイブリッド・電気自動車に関する技術の開発状況を特許からみると,少し異なる力関係もみえてくる。
図3左はハイブリッド・電気自動車(電気自動車を含む)に関する技術ストックを日本国特許の出願件数シェアでみたもの,図3右は各社の技術競争力をPCIシェアでみたものである。
これをみると,やはり技術ストック,技術競争力ともにシェアが大きいのはトヨタである。研究開発に資源を投入し,技術の面でも他の自動車メーカーを引き離し,トップの地位を築いていこうとするトヨタの戦略が伺える。トヨタに次いで出願件数が多かったのは日産自動車であり,国内で2番目にハイブリッド車を市場に投入したホンダは,技術ストック,技術競争力ともに3位の地位に甘んじている。
一方,三菱自動車,アイシンAWが,技術ストックに比べて技術競争力でシェアを伸ばしており,ハイブリッド・電気自動車に関して注目すべき技術を持っているようだ。三菱自動車は電気自動車の実用化と普及を実現するべく研究車両「i MiEV」を製作するなど,「電気自動車の三菱」を目指して電気自動車の開発に注力しているようだ。こうした取り組みが高い技術力として結実したものと思われる。
カーナビと連携した制御で燃費を改善
ハイブリッド・電気自動車を特許からみると,今後の技術開発の方向性がみえてくる。
図4,5はハイブリッド・電気自動車に関する日本国特許に付された技術分類コード(IPC)の件数推移を示したものである。IPCとは,International Patent Classification(国際特許分類)の略で,国際的に共通の特許分類として,各国の特許文献検索の便に資するものである。
これをみると,ハイブリッド・電気自動車とは直接縁のなさそうな信号(G08)に関する出願件数が1990年代後半から増加しているのが目を引く。その特許の内容をみてみると,カーナビゲーション・システムなどと連動して,先の道路状況を把握し,その状況下で最適な燃費効率を達成するためのエネルギー配分を決定する制御システムなどが含まれている。ハイブリッド技術とは,走行状況に応じてエネルギーの利用方法を変化させるための制御技術であり,従来はドライバーのアクション(スタートする,加速する,ブレーキをかけるなど)に従って制御を行っていた。これを地図情報と連動し,道路状況を事前に把握することで,例えば坂道などトルクを要する道路ではモーターを利用するなど,ドライバーの運転に先立ってエコな運転を実現する,まさにエコを自ら考える車へと進化していく方向に向かっているようだ(カーナビ経路探索技術に関する分析はこちら)。
2001年以降に出願が加速するシリーズ・パラレル方式
次に,ハイブリッド・電気自動車の特許を,タイプ別に分類し出願推移を見る(図6)。シリーズ方式,パラレル方式は,1990年代に入り徐々に出願件数を増やしており,ホンダのハイブリッドシステム「Honda IMA」が分類されるパラレル方式の出願は,1997年あたりを境に急伸している。
また,1997年に世界で初めて量販が開始されたトヨタ・プリウスのトヨタハイブリッドシステム(THS)に代表されるシリーズ・パラレル方式は,1995年以降出願が進み,1998年には特許出願件数でシリーズ方式を上回っている。さらに,2001年以降は,自動車メーカー各社が,ハイブリッド・電気自動車を積極的に市場へ投入してきており,パラレル方式およびシリーズ・パラレル方式の特許出願件数も躍進している。
1997年に初代ハイブリッド車が登場し,2003年以降から現在のハイブリッド車は,既に2代目を迎えている。このような技術革新を踏まえ,出願件数上位15社が2000年以降に出願した特許に分析対象を絞って各社の状況を見ていく。
図7の方式別の出願件数では,各方式でトップのトヨタ自動車が,シリーズ方式218件,パラレル方式1467件,シリーズ・パラレル方式1488件と,パラレル方式およびシリーズ・パラレル方式でほぼ同等に出願を進めており,両方式での出願を牽引している。
次に出願件数の多い日産自動車は,シリーズ方式187件,パラレル方式728件,シリーズ・パラレル方式583件と,シリーズ・パラレル方式に比べ,パラレル方式での出願が若干上回る。
パラレル方式での出願件数3位のホンダは,シリーズ方式57件,パラレル方式315件,シリーズ・パラレル方式98件とパラレル方式に軸足を置いた出願を進めているようだ。4位の日立製作所も,他方式に比べて,パラレル方式での出願件数が上回る。