2003年2月17日。日欧韓のAV機器メーカー9社から成る「Blu-ray Disc Founders」は,「Blu-ray Disc」規格のライセンス供与を開始した。これにより,規格に準じた製品の出荷が可能になったことを受け,ソニーは世界初のBlu-ray Discレコーダを4月10日に発売。希望小売価格は45万円だった。

 この製品には光ディスク装置の重要な機能が欠けていた。コンテンツを格納した,再生専用ディスクへの対応である。CDやDVDといった既存の光ディスクの最大の利点は,再生専用ディスクによって,音楽や映像などのコンテンツを安価に配布できることだった。Blu-ray Discをはじめとする次世代DVDでも,そこに大きな市場があるとみなされていた。ただしこの時点では,再生専用のBlu-ray Discの仕様がまだ固まっていなかった。Blu-ray Discを推す各社の当面の目標が,2004年に開催されるアテネオリンピックまでにHDTV映像を2時間以上録画できるレコーダーを発売することだったからである。このため,再生専用ディスクの規格作りは,録画用ディスクの後に回された。

 ここに,規格作りで遅れをとった東芝とNECが付け入る隙があった。2003年5月に開催された光ディスク関連の国際会議「ODS 2003」で,東芝は4種類の再生専用媒体の規格を発表している。このとき東芝は,規格の名称として「HD DVD」を検討していると語った。

 ただし,東芝らが目指したDVD Forumでの標準化は,一筋縄ではいかなかった。DVD Forumの幹事会(Steering Committee)は,6月の会合9月の会合のそれぞれで,東芝とNECの次世代DVD仕様の承認を見送った。幹事会では,Blu-ray Discを推す企業群の影響力が強かったからである。両者の提案は,11月の会合でようやく一部承認された

 こうした動きを横目で見ていたのが,米国ハリウッドの映画会社である。規格分裂を危ぶんだ映画会社は,2003年秋に光ディスク・メーカー各社に要望書を提出。ハリウッドは規格の統一を望んでいることを匂わせた。

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* Tech-On!ではこれまで,次世代DVDに関する動きを詳細に報道してきました。関連記事は500本以上にも上ります。2002年から各年ごとに分けて動きをまとめるとともに,それらの関連記事へのリンクを集めました。本記事はその2003年版です。