2003年11月ころ,DVDの次世代を担う光ディスク規格を策定中の大手AV機器メーカー各社は,米国ハリウッドから1通の文書を受け取った。通称「Wish List」。HDTV画質で映画を格納できる再生専用パッケージ媒体の実現に当たり,メーカー側に満たしてほしい条項をまとめた要望書である(図1)。次世代光ディスクに対して求める特徴を,大まかながらも9か条にわたって列挙している。


図1 ハリウッドが次世代光ディスク媒体に求める9か条
米国ハリウッドの主要映画会社は,次世代光ディスクに対する要望書を9か条にまとめた。図は,その趣旨を並べたものである。既にBlu-ray Disc規格を推進する中核メンバーである「Blu-ray Disc Founders」やHD DVD規格の提案企業であるNECや東芝に配布されているもようだ。この要望書は通称「Wish List」と呼ばれている。

 AV機器メーカー各社は,こうしたWish Listを以前にも受け取ったことがある。現行DVD規格が統一される前に,ソニーとオランダRoyal Philips Electronics社が提案した「MMCD規格」と,東芝や松下電器産業などが推す「SD規格」が激しく争っていたころのことだ。そのときは6か条の Wish Listが提示され,DVD規格をつくる上での議論の礎になった。

 そうした経緯から各社は,今回の9か条を重く受け止める。ハリウッドがHDTVのパッケージ媒体を真剣に考え始めた証拠と映るからだ。「米国のある大手映画会社は,HDTV対応のテレビ受像機の米国における普及率が10%を超える2005年半ばあたりに,HDTVパッケージを投入したいと考えているようだ」(大手AV機器メーカーの幹部)。

「承認」で勢いをつけられるか