現在,世界の観光産業の7割が環境再生のための必要経費を余儀なくされているという。大手観光企業は膨大に膨れ上がる環境再生維持費に苦しみ、かくなる上はと未だ手付かずの自然地域の開拓に走る。たとえば新観光地開拓をアメリカ系リゾート企業が切り開く。環境悪化が起きると中国系企業に売却し、次の未開拓観光産業に乗り出す。中古ホテルを購入した中国企業は、建物やプールの増設と改装を施し、安価な観光施設に衣替えさせ中国人観光客をわんさかと呼ぶ。

 バリの美しい浜が過去の絵葉書になってしまうのは時間の問題か。そんなセンチメンタルな気持ちになっていると、ウエイトレスが「日本からですか?」と声をかけてきた。何とも美しいバリニーズである。聞くところによるとクタ大学の観光学部の学生で、インターンシップをしながら、いつかホテルを経営をと夢見ているのだそうだ。


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 自国の観光地域であっても、自国民がホテルを経営するのは当たり前のようで難しい。法律知識、教養のみでなく資金調達、運営経営力、人事管理、サービス改善、集客告知など総合的経営力を要求されるからだ。事実、宿泊しているサンティカホテルのオーナーは中国人である。いまではクタビーチ周辺はアメリカ系よりも中国系、日本系などの外国資本によるホテル、飲食店、小売店が主流になってきた。

 地元民による地元観光産業経営。それはどうしたら実現できるのだろうか。かの女子大生があまりに美しく、その笑顔があまりにまぶしかったものだから、彼女の夢を叶えるための成功シナリオを無性に考えたくなってきた。

 まず、大資本投下型のビジネスは無理だろう。アメリカや日本や中国とは一線を画したコンセプトにしたい。もちろん、「観光資源をどんどん消費して、なくなったら捨てる」という方法は絶対に不可である。

 そうであれば、いっそのこと自然共存型…(次のページへ