【半導体産業の競争力を考える】 「勝とうとする意識とビジョンを」---赤坂洋一氏に聞く(1)
今年の当コラム「材料で勝つ!」を振り返ってみると,日本の電機産業の競争力を採り上げることが多かった。市場規模に対して企業数が多いことから同質化競争や過当競争に陥り苦しんでいる企業が多く,筆者なりにその原因や対策を考えようとしたのである。そのもっとも苦しんでいる代表例が半導体業界だ。そこで年末を迎えるにあたり,本コラムの総決算として,日本と米国の二つの半導体産業を熟知されているオピニオン・リーダーの方にインタビューをお願いした。
今回,インタビューに応じてくださったのは,大阪大学 教授の赤坂洋一氏である。同氏は,三菱電機で半導体プロセス技術者を経験した後,米Applied Materials社の米国本社や日本法人であるアプライドマテリアルズジャパンの経営に携わり,現在は大学教授というニュートラルな立場で活発に提言を行っている。インタビューの内容は本稿と次回の2回に分けてお送りする。本稿ではまず「日本流と米国流,おのおのの強みと弱みは何なのか」を中心にお聞きしていった。
筆者 日本の半導体産業がどうしたら競争力を持てるかについてお聞きして行きたいと思います。まず,現在の日本の半導体産業の状況をどうご覧になっていますか?
赤坂氏 元気をなくしていますね。マスコミが書き立てることもあるんでしょうが,半導体産業は不甲斐ないという世論というかムードになっているし,勝ち抜くシナリオが示されないので,元気が沸いてこない。
筆者 原因は何だとお考えでしょうか。
赤坂氏 これは半導体に限ったことではなくて,日本の電機産業全般に言えることですが,企業数が多すぎます。半導体メーカーだけで30社くらいある。それなのに,対象マーケットが狭い。欧米や韓国・台湾のメーカーが『オリンピック』をやっているとしたら,日本メーカーだけが国内に閉じた大会をやっているようなものです。多くのメーカーが押し合いへし合いして,狭い国内マーケットを取り合っているのだから,利益が上がるわけがない。
筆者 何社くらいにしたらいいとお考えですか。
「半導体メーカーの適正数は2社か2.5社」
赤坂氏 半導体メーカーでいえば,2社かな。外国メーカーとの合弁企業があるかもしれないので,それを0.5社として勘定に入れれば,せいぜい2.5社でしょう。そのうえで,メモリとSoC(system on a chip)で世界一の企業を目指さなければいけないと思います。
筆者 メモリは1社に統合されて,成功例だと見られていますが…
赤坂氏 あなた方メディアが「成功だ成功だ」と賞賛するのはいかんですね。かつて日本メーカーがDRAMで世界の半分近いシェアを持っていたことを考えますと,まだまだ成長戦略は打ち出せていないですね。「世界でトップになる」とか,少なくとも「いついつまでに米国メーカーMをシェアで抜く」とか具体的な勝つという目標を打ち出して,それを目指さないととても成功はおぼつきません。
筆者 再編は必要だという提言はあちこちでされていますが,なかなか現実には動き出していないようです。
赤坂氏 日本の半導体メーカーの経営陣を見ていますと,変わろうとする気持ちそのものがないのではないかと思います。自ら再編する気持ちがないのに,外部からやいのやいの言っても無駄かもしれませんね。
筆者 危機感がないということですか?
赤坂氏 そう,それと保身でしょうね。今,景気がいいですから,わずかですが黒字になってます。そうなると日本のメーカーのトップは2年くらい安泰で,わざわざ自分の任期の間にリスクをとりたくないと思うのでしょう。本当は,調子のいいときに再編作業は進めた方がいいと思うんですけどね。
筆者 韓国や台湾メーカーと世界で熾烈なシェア争いを展開しなくても,そこそこの利益を出して国内市場中心に細々と続けていければいい,という考え方もあるのではないでしょうか。
赤坂氏 えー?あなたは私に「勝つためにはどうしたらよいか」を聞きにきたんじゃないんですか? 確かに「勝たなくてもいい」というのも一つのやり方でしょう。でも,それでよかったら私は何も言うことはない。しかし一国の基幹産業が衰退してもそれでいいという話にはならないのではないですか?
筆者 海外メーカーのトップが「勝とう」と頑張る原動力はどこから来るのでしょうか?
「企業トップはすぐクビにできるように」
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■技術者の一人として感じていたことを,全て赤坂さんがおっしゃられています。ビックリしたのと感動したのと...。上司に相談しても,“俺のビジョンはハッキリしている”の一点張りで,議論のしようもありません。
(2006/12/25)



















