外国にいると日本の良さがよく見える,とよく言われる。短期の海外出張でも日本に帰ってくると特に「料理が旨い」としみじみと思う。帰国早々,こんなブログを読むともう堪らない。

 このブログを書いた日経ものづくりのOデスクにさっそくこの寿司屋を聞き出した。するとその店は,会社帰りにちょっと寄るには遠いのだが,休日などに家族とよく出かけるデパートの中にあるという。そこでその店にはいずれ家族と行くことにして,今回は,筆者がたまに行く都心の寿司屋に行った。その寿司屋にしたのは理由がある。シャリが美味しいとつねづね筆者が思っているからだ。Oデスクのブログを読んで,旨いシャリの寿司をどうしても食したくなったのである。

私もはまった「眼鏡店員のマジック」

 ここで告白してしまうと,実は筆者,Oデスクの書いたブログを読むとどうも消費意欲がかき立てられてしまうようだ。この前もOデスクが書いた眼鏡店のことがどうしても気になっていて,年末になって引越し作業が終わった日,ようやく時間がとれたので行ってみた。

 筆者も最初はちょっと様子見のつもりだったが,店員の「マジック」にやはりしっかりはまって気がついたら「近く用」と「遠く用」の二つも購入していた。だいたい筆者がもともと持っていたメガネがブランド物であるにもかかわらず酷い代物だった。左右の度が合っておらず,「遠くを見るときは右目でしか見ておらず,近くを見るときは左目でしか見てませんね。これでは疲れるでしょう」とのご指摘。それから,鼻と耳にあたるところが痛くなり,ひどいときは炎症を起こしていた。眼鏡なんてそんなもんだ,と思っていた。

 しかし店員の方は「そういうものではない」と言うのである。「なんといいましょうか。頭全体をふわっと包み込むような感じにすれば痛くなることはないのです」。Oデスクの文章にもあるように,ポイントはテンプル(つる)の先端,耳に掛かるモダンと呼ぶ部分の形状である。ここを頭に合わせて湾曲させ,側面からの接触面積を多くして,耳と鼻への荷重を下げている。この店はこの微妙な調整にかなりの時間をかける。もともとフレームメーカーだけあって,眼鏡そのものの重さを軽くしていることもあるだろう。とにかく,かけ始めてから4カ月ほどになるが,まったく痛くなることはない。快適である。チタンフレームと非球面ガラスレンズの組み合わせで,価格は二つで12万円ほど。購入時には少し高いかと思ったが,この快適さならば妥当な価格だと今は思っている。

寿司のシャリを旨くするポイントは温度管理

 さて寿司の話であった。実は,米国出張中に寿司屋に行った。そこそこ美味しかったのだが,寿司としてはシャリがイマイチであった。種に対してシャリの量が多く,固く重い感じである。Oデスクのブログを読んで合点がいった。問題はシャリの温度管理であるようだ。でんぷんの吸水率を微妙に調節して「口の中に入れるとパラリとほぐれ,魚の味の付いた唾液を吸ってサラリと喉を通ってしまう」というシャリにするのがポイントのようだ。

 筆者は回転寿司にもたまに行くが,シャリの温度が高すぎる店が多いように感じる。確かに軟らかくそれなりに美味しいのだが,寿司とは違う食べ物だと思うことにしている。寿司のシャリの温度は低くても,高くてもいけないようである。

 さて件の寿司屋。今回もやはり期待を裏切らない絶妙のシャリであった。中トロは季節的に今ひとつであったが,すべて天然ものの真鯛,コチ,さより,かつお,取貝,やりいか…。そして極めつけは,うに。この店では,うにを軍艦巻きにせずシャリに載せる。うにが落ちないようにそろそろと口に運び,シャリとうにが口の中でとろける感触を味わう——。締めに芽ねぎをいただき「やっぱり日本人はいい」と思うのだった。値段は1人1万円はしない。シリコンバレーの寿司屋より安かったのである。

インド~ヨーロッパ放浪時の食体験